"義母が遺した二十年の通帳" 第15話
おができな顔をして働けたのは、誰が毎朝弁当を持たせ、のついた作業着を洗い、親戚の付きいををげてこなしてきたからだい? おがに入れる万ぽっちので、族と老が暮らせるわけがないだろう。 りない分を、由美さんが朝のスーパーで腰を痛めながら、夜のビル掃除でをあかぎれだらけにしながら補填していたことを、おは本当にらなかったのかい? ろうともしなかったんだろう。 自分のゴルフ代とのローンに消えていく料を棚にげ、おはもの、由美さんのき血を吸ってきてきた寄虫に過ぎないんだよ』
「お、お袋……やめてくれ……」
浩がを抱え、崩れ落ちるように膝をついた。 だが、義母の容赦ない言葉は、孫たちにも向けられた。
『そして、、真奈。 おたちにも言っておかなければなりません。 おたちが無邪気に母親を蔑み、「お母さんは何もできない」「領が悪い」と笑っていられたのは、おたちのすべての面倒を、母親が先回りして片付けてくれていたからだよ。 おたちが学で恥をかかないように、友達に馬鹿にされないように、由美さんがどれだけ自分のを削って、おたちの見栄を買い支えてきたか。 それなのに、祖母の介護が始まれば「臭い」「汚い」
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と部に閉じこもり、母親が疲弊して倒れそうになっても、コップ杯のすら差しさなかった。 おたちは、浩の酷さを最も都よく受け継いだ、救いようのない甘ったれだよ。 祖母として、けなくて涙もない』
真奈が顔をで覆い、肩を激しく震わせて泣き崩れた。 は壁に背を預けたまま、まるでのように青ざめ、虚空を見つめて震えていた。
は、最にこう締めくくられていた。
『信託には、私が公正証で指定した通りの続きが取られています。 あの座にある百万円は、最初から最まで、全額が佐藤由美個の特財産であり、佐藤の遺産分割の対象には円たりとも含まれません。 浩、、真奈。おたちには、あの通帳の切れ枚に触れる権利すらありません。 もし円でも由美さんから奪おうとするなら、芳が弁護士を通じて、直ちに法続きを取るはずになっています。
そして、由美さん。 私の切な、たったの娘。 あなたがこの、どれほどの獄を耐えてきてくれたか、私は誰よりもっています。 私が認症になり、夜に徘徊してあなたを困らせたも、あなたは度だって私を叩かなかった。 たいを拭きながら、私のを握って「丈夫ですよ」と笑ってくれた。
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あの温もりだけで、私の辛かったのすべてが救われました。
由美さん。もう分です。 あなたはもう、こののために分秒たりとも命を使う必はありません。 そのおを持って、今すぐこのをていきなさい。 浩を捨て、を捨て、真奈を捨てて、あなた自のを歩きしなさい。 これは、あなたをこの獄に縛り付けてしまった、私からの最の願いであり、命令です。 誰に慮することもなく、振り返ることもなく、あなたの幸せのためだけに、そのおを使いなさい。
今まで本当に、ありがとう。 さようなら。
佐藤 静』
芳叔母さんがを読み終えた。
静まり返ったリビングに、真奈のしゃくりげる泣き声だけがく響いていた。 から差し込むのが、テーブルのに置かれた公正証の印を、血のように赤く浮かびがらせている。
浩は畳のに両をつき、額をに押し当てたまま、ピクリともかなかった。 首筋が恥辱と絶望で赤黒く染まり、荒い息を吐くたびに、その肩が刻みに波打っていた。
母親から、の淵から突きつけられた、絶対な絶縁状。 自分が信じ込んできた「の主」「派な父親」「親孝な息子」という虚構が、母親自の跡によって、完膚なきまでに叩き潰されたのだ。
「……聞いたかい、浩」
芳叔母さんが老鏡をし、ややかに言い放った。
「これが、姉さんが遺した真実だよ。信託の続きも、弁護士の配も、すべて完している。