"義母が遺した二十年の通帳" 第21話
私はさなキッチンにち、お気に入りのホーローの鍋に湯を沸かした。 町のベーカリーで昨買ってきた、然酵母のパンを切れ、トースターに入れる。
さなフライパンをし、バターをひとかけら落とす。 ジューッという軽やかな音とともに、ばしい匂いがちった。 卵をつ割り入れ、蓋をしてにする。 がふんわりと固まり、黄がトロリとした半熟の目玉焼き。
誰の好みにわせる必もない。 醤油をかけるか、ソースをかけるか、塩コショウにするか。 選ぶのは、私自だ。
マグカップにいアールグレイを注ぎ、湯気を吸い込む。 柑橘系の華やかなりが、胸の奥をすうっと満たしていった。
さなローテーブルに、目玉焼きを乗せたトーストと、マグカップを並べる。 窓際のクッションに腰をろし、両をわせた。
「いただきます」
さな声が、静かな部に溶けていく。
カリッと音をててトーストをかじる。 バターの豊かなと、パンの素朴な甘みがいっぱいに広がった。 温かい茶をむ。 喉を通っていくさが、臓腑に染み渡っていく。
誰の嫌を伺うこともない。 誰の音に怯えることもない。 めないうちにべる、ただ私だけのために作られた、完璧な朝。
テーブルの隅、さな写真てのに、穏やかな笑顔を浮かべた義母・静の写真が飾られていた。
そのには、私がパート先のから持ち帰った、さなのスイートピーが輪、ガラスの瓶にけられている。
私は写真のの義母に向かって、静かにマグカップを掲げた。
「お義母さん。今のパン、すごく美しいですよ」
写真のの義母は、あのと同じように、優しく、誇らしげに微笑んでいるように見えた。
計の針が、を指した。 からは、駅のさなでのパートが始まる。 の茎を切り揃え、たいに触れ、季節の移ろいを肌でじる、私の好きな仕事だ。
私は最ののトーストをゆっくりとわい、ちがった。 窓のには、どこまでも広がる青い空と、り輝くが広がっている。
私は私のを、今からまた、しくきていく。