"息子の捜索地図を消す男" 第2話
野寺さんは私の顔をじっと見つめ、やがてさく息をついて頷いた。
「わかった。だが、半には戻りなさい。が落ちたら、ここは灯がない。何かあったら余計に配が増えるからね」
「はい。すみません」
「謝ることはない。ってきなさい」
公民館のアルミサッシの引き戸をけると、湿ったのが頬を打った。 がりそうな、たいが空を覆っている。
私は自転のカゴにチラシの束を押し込み、ペダルを踏み込んだ。
県へ続く緩やかな坂をりながら、私は何度ものに線をらせた。 悠が消えたのは、の曜、午過ぎのことだ。
学の児童クラブにはかず、自宅へ直接帰るだった。 をる悠の姿は、同級の母親が目撃している。だが、そこから自宅までの約・キロの通学のどこかで、息子の取りは完全に途絶えていた。
通学は、古い集落を縫うようにる本だ。 の両側には、平の古民と、しく建った数軒の建売宅が混ざりっている。 は通りがほとんどない。防犯カメラも、農協の倉庫のと、個商の軒先に箇所ずつあるだけだった。そのどちらのカメラにも、悠の姿は映っていなかった。
「こんにちは。すみません、この子を見かけませんでしたか」
途の学の集団に、私は自転を止めて声をかけた。
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ジャージ姿の女子徒がを止め、恐る恐るチラシを覗き込む。
「……あ、ニュースでやってる子だ」 「ごめんね、見てないです」 「部活、体育館だったから見てなくて……」
「そうですか。ありがとう。もし何かいしたら、ここにいてある警察か公民館に連絡してください」
徒たちは気の毒そうな顔をしてさくをげ、にっていった。
次は、古い物の先だった。 主の老が、先に並べた箒を片付けながら首を振った。
「曜の夕方かねえ。あのはがりそうだったから、にはを閉めちまったんだよ。会さんからも同じことを聞かれたよ。力になれんで悪かったね」
誰もが同じだった。 誰も見ていない。 誰もらない。
歳の男の子が、ランドセルを背負ったまま、昼の宅から煙のように消えてしまうはずがない。 誰かがに乗せたのか。 それとも、どこかの空きや物置に閉じ込められているのか。 嫌な像が、黒い澱のように胸の底に溜まっていく。
県と旧が交わる歩ので、私は自転を止めた。 配り終えられないチラシのを見つめていると、に界の端を横切るものがあった。
自転を押して歩いてくる男子学だった。 黒い学のホックをし、のついたサッカーボールを入れたネットをハンドルにぶらげている。
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私は反射にをかしていた。
「あの、すみません」
声をかけると、その徒はし驚いたようにを止めた。 名札には「宮」と刺繍されている。
「これ、探している子なんです。曜の夕方、このあたりで……」
チラシを差しす私のは、微かに震えていた。 どうせまた「見ていません」と言われるのだと、のどこかで諦めが混ざっていた。
だが、その徒はチラシの写真をじっと見つめ、眉をひそめた。
「……これ、悠くん?」
息が止まりそうになった。
「っているの?」
「ってるっていうか、所だし。僕の妹と同級だから」
宮くんはチラシの文字に目をらせ、それから私の顔を見た。
「あのさ、なんでみんな、のの方ばっかり探してんの?」
「え?」
「僕、曜に悠くん見たよ」
歩のをトラックが通り過ぎ、ごうごうとけたたましい轟音が響いた。 その音がくへ引いていく、私のには自分の臓の音だけが異様にきく鳴り響いていた。
「……どこで? 何頃?」
「曜の半くらい。部活の買いしで、旧堤の横の農をチャリでってたんだ」
宮くんは、県の側、町れへ続く暗い田園帯の方向を指配した。
「旧堤防の、あの古くなったのポンプがあるじゃん。あのフェンスの横に、悠くんがしゃがんでた。赤い靴履いてたから、すぐわかったよ。
声かけようとったけど、急いでたし、誰かと待ちわせでもしてんのかなとってスルーしちゃったんだけど」