"息子の捜索地図を消す男" 第6話
だから私がひとりで見るんだ。君や、善で集まってくれた所のたちを危険に晒すわけにはいかない」
野寺さんは私の元、ぎゅっと握りしめられた私の指に線を落とした。
「……何か、気になることでもあったのかい?」
探るような響きは微もなかった。 あくまで、取り乱した母親を気遣うだけの、優しい問いかけだった。 だがその瞳の奥に、ガラスのようなたくいが宿っているのを、私は見た。
「……いいえ」
私は爪が掌にい込むほど拳を握りしめ、首を横に振った。
「ただ……どこでもいいから、く見つけたくて。焦ってしまって、すみません」
「無理もない」
野寺さんはさく笑い、ふたたび私の肩を軽く叩いた。
「母親なら当然だ。だが、焦りは目を曇らせる。今夜はもう帰りなさい。にいて、話ので待つんだ。何かあれば、私が真っ先にらせるから」
そのはかかった。 けれど、そのかさが、私を窒息させようとする毛布のようにじられて、私は震えを止めることができなかった。
◇
夜の自宅は、恐ろしいほど静まり返っていた。
築の造平。 玄関には悠の青い靴が揃えて置いてあり、廊のフックには学用の黄い提げ袋がぶらがっている。 居のテーブルのには、曜の朝に悠がべ残したパンのが、干からびたまま皿に乗っていた。
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片付ける気にはなれなかった。 それを片付けてしまえば、息子の常がそこで途切れてしまうような気がしたからだ。
私は暗い部の、座布団のに膝を抱えて座っていた。 かりは点けなかった。 を通るのヘッドライトが、折、に濡れた障子をく照らしてはっていく。
『側ルートは般ち入り禁止』 『警察犬・ボランティアはへ誘導すること』 『言無用』
あのメモの文字が、暗ので何度も網膜に焼き付いてれなかった。
なぜ野寺さんは、旧堤から々をざけようとするのか。 宮くんは確かに、曜の夕方に悠を見たと言った。 あの所には、何があるのか。
警察に通報すべきだろうか。 スマートフォンを握りしめ、画面を表示させる。 「110」の文字を押しかけて、指が止まった。
警察に何と言えばいい? 「自治会が怪しい」と? 「みんなに慕われている野寺さんが、捜索記録を偽造して川へかせないようにしている」と?
警察がどうくかは目に見えていた。 彼らはまず、町の老である野寺さんに確認を取るだろう。 『会さん、お母さんがこう言っているんですが』と。 そして野寺さんは、先刻と同じように穏やかな顔で答えるはずだ。 『ああ、お母さんは労でし混乱されているようだ。旧堤はが悪いから、私が責任を持って確認しているところですよ』と。
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警察は納得するだろう。 昨今この町に来た、緒定な単親庭の母親と、町のために何も尽くしてきた元公務員の自治会。 どちらの言葉が信じられるかなど、を見るよりらかだった。
もし通報して野寺さんを警戒させたら? もし彼が本当に何かを隠していて、警察がくにそれを「処分」しようとしたら?
喉の奥が引き攣り、胃液が逆流しそうになった。
悠はきているのか。 それとも――。
「……いやだ」
声がた。 暗い部に、自分の嗚咽が落ちる。
「んでるわけがない。そんなはずない」
曜の朝、あの子は「いってきます」と言って元気にびしていったのだ。 の揚げパンを楽しみにしていた。 図で作った粘の恐竜を、今持ち帰るんだと笑っていた。
私が確かめるしかない。 の善や、警察の都に頼っているはなかった。 野寺さんが何を隠しているのか。 の朝、みんながのガードに集まっている隙に、私が旧堤へく。 あそこへって、自分の目でポンプの周りを確かめる。
計の針が、午を回った。 脚は次第にまり、くでが唸る音だけが残っていた。 私は度も横になることなく、朝のが障子をく染めるのを待った。
◇
午分。 町全体が、たい朝の底に沈んでいた。
私は黒いウインドブレーカーを羽織り、リュックに懐灯と具、そして予備のチラシを詰め込んでをた。