"息子の捜索地図を消す男" 第8話
元気な声とともに、の軽トラックが滑り込んできた。 野寺さんだった。 助席からりてきた彼のには、真しい図のコピーの束が握られている。
「みなさん、いからありがとうございます。今の予定ですが――」
野寺さんが広のにつと、ざわついていたたちが斉に静まり返った。 彼の指示は確で、無駄がない。 のガードをつの班に分け、刈りを持つ者、トランシーバーを持つ者を配置していく。 誰もが真剣な表で頷き、彼の言葉をメモしている。
私は混みのろから、その景を眺めていた。 そして、々の線が野寺さんに集している隙に、静かにそのをれた。
向かったのは、駐の隅にめられた野寺さんの軽トラックだ。
鍵は刺さったままだった。 この町では、荒らしなど滅に起きない。誰もがに鍵をかけたまま作業をするのが当たりだった。
臓が鐘を打つ。 私は周囲を見回した。 全員が野寺さんを囲んでおり、こちらを見ている者はいない。
私は運転席のドアを、音をてずに数センチだけ引いた。
内には、独特の匂いが充満していた。 使い古した革の袋、防虫スプレー、そして微かな湿布の匂い。 ダッシュボードのには、クリップで留められた自治会の類と、老鏡が置かれている。
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元のゴムマットには、やはり昨と同じ赤黒い粘質のが、乾いてくこびりついていた。
審なものは、何もない。 ただの、真面目な齢者の仕事用トラックだ。
諦めてドアを閉めようとした、私の爪先が、助席の元に転がっていた黒いビニール袋に当たった。
スーパーの袋ではない。 コンビニエンスストアの、しの袋だ。 が固く結ばれていたが、が透けて見えていた。
私は屈み込み、その袋にを伸ばした。
みがあった。 結び目を解き、を覗き込む。
入っていたのは――。
サイズの、プラスチック容器に入ったフルーツゼリーだった。 ぶどうと、りんご。 袋からされ、数個がそのまま放り込まれている。 そのに、子ども用のキャラクターが印刷された個包装のビスケットと、未封の消毒液、そしてガーゼと伸縮包帯の束が入っていた。
私のので、ゼリーのプラスチックがカサリと音をてた。
……ゼリー?
野寺さんの族構成は、町のなら誰でもっている。 数に脳梗塞を患い、現は寝たきりで訪問介護を受けている奥さんと、野寺さんの暮らしだ。 奥さんは固形物が喉を通らず、流を胃ろうで摂取していると、以、民委員のが話していた。
野寺さん自が、甘いゼリーを好んでべるだろうか。
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それも、わざわざ子ども向けのキャラクターが描かれたビスケットと緒に?
消毒液と、包帯。 何のために。
その、くで拍の音が響いた。 野寺さんの朝の訓示が終わったのだ。
私は慌てて袋のを結び直し、元の位置に戻した。 ドアを静かに閉め、トラックのかられる。 背にたい汗が伝っていった。
「遥さん、こんなところにいたのかい」
振り返ると、婦会の渡辺さんが、おにぎりの入ったタッパーを抱えてっていた。 懐っこい、世話焼きでられる所のおばさんだ。
「朝ごはん、ちゃんとべなきゃ駄目よ。ほら、梅干しのおにぎり、握ってきたから」
「……ありがとうございます、渡辺さん」
私は震えるでおにぎりを受け取った。 悸を抑え込みながら、できる限り自然な声を取り繕う。
「あの……野寺さん、本当にお忙しそうですね。奥様の介護もあるのに、私のためにこんなにいてくださって……申し訳なくて」
「本当よねえ」
渡辺さんはく同するように頷き、野寺さんの背に線を向けた。
「奥さんのことだけでも変なのにね。ほら、お孫さんのこともあるでしょう?」
お孫さん。
その単語に、私の神経がピンと張り詰めた。
「……お孫さん、ですか?」
「ほら、拓(たくみ)くんよ。会の息子さんのところの子。ほら、息子さん夫婦は数に婚して、お父さんは県で働いてるから、拓くんは学の頃から会のから学に通ってるじゃない」
らなかった。