"息子の捜索地図を消す男" 第14話
彼は壁にを打ちつけ、ずるずるとそのに崩れ落ちた。 両で顔を覆い、指の隙から粒の涙がぼろぼろとこぼれ落ちる。
「僕じゃない……僕がやったんじゃないんだ……! 殺そうとしたんじゃないんだよ……!」
の精神の堤防が、音をてて決壊した。
私は膝をつき、震える彼の肩を掴んだ。
「何があったの。最初から全部話しなさい。……悠は、きているの?」
拓くんはしゃくりげながら、何度も首を縦に振った。
「い、きてる……きてるとう……おじいちゃんが、べ物を運んでるから……」
きてる。 その文字がにび込んできた瞬、私の膝からすっと力が抜けそうになった。 きていた。 悠は、たいのに埋められたりしていなかった。 だが、堵に浸っているなど秒もなかった。
「話しなさい。曜の夕方、何があったの」
拓くんは壁にを凭れかけ、濁った瞳で虚空を見つめながら、途切れ途切れに語り始めた。
曜の午過ぎ。 がく終わった拓くんは、先輩から無断で借りていた原付バイクに乗っていた。 原付の免許は持っていなかった。 学の厳しい則では、免許の取得自体が学処分になる為だった。
「旧堤の管理用なら、も警察も来ないから……ちょっとるだけのつもりだったんだ」
がりしそうな曇り空の、彼はスピードをして曲がりくねった堤防のをばしていた。
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ヘルメットも被っていなかった。 そして、あの古いのポンプの裏にある、急なカーブに差し掛かっただった。
ススキの茂みから、散歩のの老がふらりとにてきた。
「ブレーキをかけたけど、にわなくて……かすったんだ。ハンドルが取られて、バイクごと滑って……」
拓くん自もアスファルトのを何メートルも転がり、両腕と脚の皮膚をく削り取られた。 痛みに呻きながら起きがると、接触した老はからねばされ、堤防の急斜面を転がり落ちて、のコンクリートの排の底でから血を流して倒れていた。
ピクリともかなかった。
「んだとった……僕が、を殺しちゃったって……」
パニックに陥った拓くんは、壊れたバイクを起こし、そのから逃げそうとした。 そのだった。
背で、カシャリといプラスチックの音が響いた。
振り返ると、ポンプの錆びたフェンスの隙に、の男の子がっていた。 赤いスニーカーに、紺のキャップ。 首からげたトイカメラのファインダーを覗き、こちらに向けてシャッターを切った直だった。
悠だった。
悠は通学をれ、川沿いの虫や鳥の写真を撮りながら、あの旧堤まで迷い込んでいたのだ。 そして、目ので起きた衝突事故と、血を流して倒れる老、そしてバイクを起こそうとする拓くんの顔を、至距から撮してしまった。
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「……悠くんは、僕の顔をってた。『あ、拓のお兄ちゃんだ』って言ったんだ……僕、怖くなって……カメラを奪おうとして……」
揉みいになり、悠のランドセルを引っ張った拍子に、あの黄いクマのマスコットが千切れた。 悠は恐怖で泣き叫び、ポンプの敷内へと逃げ込んだ。
拓くんはそれ以追いかけることもできず、壊れたバイクを引きずりながら、血まみれの体で自宅へと逃げ帰ったのだという。
「おじいちゃんに、全部話したんだ……自首するって、警察にくって泣いたんだ……! でも……」
拓くんは唇を噛み、血を滲ませた。
「おじいちゃんが、僕の頬を叩いたんだ。『馬鹿者が』って。『おには推薦が決まりかけている学がある。ここで無免許過失運転致なんて起こしたら、退学どころか科者だ。野寺のは終わりだ』って……」
野寺修は、泣き叫ぶ孫を居に押し込めると、すぐに救急箱をして傷の当てをした。 病院へ連れてけば、擦過傷の形状からバイク事故だと医師に気づかれる。だから自宅で、持ちのガーゼと包帯で当をしたのだ。
そして野寺は、軽トラックにスコップと毛布を積み、現の旧堤へと急した。
「おじいちゃんは、倒れていた老をどうしたの……? まさか……」
私の声は震えていた。