"息子の捜索地図を消す男" 第18話
夜の帳が完全にり、町の防災政無線が、午を告げる子音のメロディをくで鳴らし始めていた。
それは、公民館で役員会が始まるだった。 自治会である野寺修が、姿を現さないはずのない。 すでに何もの役員が、公民館で彼の到着を待っているはずだった。
「……私を殺して、で埋める気?」
私は嘲笑うように言った。
「できるわけがないでしょう。役員会には誰もが来ている。渡辺さんも、荒さんも、みんなあなたが来ないことを審にっている。今夜、あなたが私と悠を消したところで、の朝には警察がこのに来るわ」
野寺さんの肩から、微かに力が抜けた。 彼の胸の奥で、何かが決定に崩れ落ちる音が聞こえたような気がした。
、この町の模範な民として、信頼される老として、誰よりも正しく、誰よりも几帳面にきてきた男。 その男が築きげた完璧な壁が、ほんの数の、たった度の孫の過失と、それを覆い隠そうとした自らの傲さによって、音をてて瓦解していた。
野寺さんはゆっくりと作業着の胸ポケットにを差し入れた。 取りされたのは、真鍮の平たい鍵が本ついた、古いキーホルダーだった。
「……に乗りなさい」
野寺さんの声は、信じられないほど枯れ果てていた。
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「連れてく」
◇
夜の農は、墨を流したように暗かった。
軽トラックのヘッドライトが、濡れたアスファルトと、にい茂るいススキの穂をく照らししていた。 ワイパーが規則正しくフロントガラスの粒を拭う音だけが、狭い内に響いている。
助席に座る私の隣で、野寺さんは黙然とハンドルを握っていた。 速度はキロ以さない。 赤信号の交差点では、誰も通らない夜のような田舎であるにもかかわらず、几帳面に止線を守ってを止めた。 その狂気じみた真面目さが、かえって私の神経を逆撫でした。
「……なぜ、そこまでして隠そうとしたの」
私はを向いたまま、ぽつりと言った。
「事故を起こしたなら、なぜそので警察を呼ばなかったの。拓くんはまだ歳よ。きちんと謝罪して、償わせれば、をやり直すことだってできたはずなのに」
野寺さんは方の暗を見つめたまま、しばらくをかなかった。 ウインカーの乾いた点滅音が、内に響く。 トラックは旧堤へと続く、未舗装の砂利へと曲がった。
「やり直す……か」
野寺さんが自嘲するように呟いた。
「君のような若いは、簡単にそう言う。だがね、遥さん。この町で度ついたは、度と落ちんのだよ」
「……」
「私の父も、かつて役の納係をしていた。
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私がまだ子どもの頃、ほんの数万の計算ミスで横領を疑われ、依願退職させられた。潔は証されたが、町の連は誰もそんなことは覚えちゃいない。『野寺のはに汚い』、その噂だけで、私は学でを投げられ、就職でも理尽な扱いを受け続けた」
野寺さんの節くれだった指が、ハンドルの皮をギリギリと締めげた。
「私は、の倍働いた。に浸かってを直し、夜の見回りを度も欠かさず、誰に対してもをげ、信頼を積みげてきたんだ。野寺のを、誰もろ指を差さない所に押しげるために、私ののすべてを費やした。……それを、あんな子どもの注つで、また振りしに戻されてたまるか」
「だから、の子を閉じ込めたの?」
私はややかに言い放った。
「あんたが守りたかったのは孫じゃない。自分の体面よ。自分が積みげてきた『派な会さん』の板が、壊れるのが怖かっただけじゃないの」
野寺さんの横顔が、ヘッドライトの反射で青く照らしされた。 彼は何も言い返さなかった。 ただ、その唇が細かく震えていた。
がきく揺れ、砂利がき止まりになった。 ススキのい藪を切り裂いた先に、黒々とした巨ながちはだかっていた。
旧堤のだった。 そしてその横に、蔦に覆われたコンクリート造りの平――旧ポンプが、夜のに沈んでいた。
エンジンが切られ、ヘッドライトが消えた。 完全な暗が内を包み込む。