"母の通帳に記された450円の謎" 第3話
「お母さん、その格好なんとかならないんですか? 健さんも、母親がこんなボロアパートで法者のような活をしているなんてったら、恥ずかしくても歩けませんよ」
さんの言葉には常にトゲがあるけれど、私はそれを彼女なりのった激励なのだと自分に言い聞かせてきた。彼女は健の妻であり、私にとってはの世界や息子とつながるための細い糸のようななのだ。
「ごめんさいね。今は段とえるから、つい着込んでしまって……さあ、そこへ座ってちょうだい。今、温かいお茶を入れるわね」
私は震える取りで台所へと向かった。お湯を沸かす数分のも、彼女は部のを品定めするように見回している。そのにはいつも価そうなブランド物のバッグが握られていた。
「お母さん、部が匂いますよ。カビと埃の匂いかしら。健さんは今、病院の邪の流で本当に忙しいんです。そんなにお母さんが倒れたりして迷惑をかけないでくださいね。自してくれないと私たちが困るんです」
彼女が座卓のに腰をろしながら、吐き捨てるように言った。健の況を詳しく聞こうとをきかけたが、彼女のたい線に気圧され、私は言葉をみ込んだ。だが、やはり仕事が忙しく、健も私のことまでが回らないようだ。
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「お茶、どうぞ」
差しした湯みを、彼女は別しただけで指1本触れようとはしなかった。
「私、忙しいので、今は お母さんがボケて事でもしていないか確認に来ただけですから」
彼女はちがると、窓際やタンスの周りを掃除のついでと言わんばかりにバタバタと触り始めた。私はその様子をただ申し訳ない気持ちで眺めていた。自由な私の代わりに部の隅々まで見てくれている。そう信じたかった。
「じゃあ、帰りますね。変な話をして健さんの邪魔をしないように。いいですね」
彼女は嵐のようにっていった。乱暴に閉められたドアの音が、え切った部に虚しく響く。私はくため息をつき、つかずのままめてしまったお茶を片付けようと腰をげた。
ふと、線をタンスのに向ける。そこにあるはずのものが界に入ってこない。臓がドくんと嫌なね方をした。
「あれ……? おかしいわね」
私は震えるでタンスのをなぞった。何かの拍子に裏へ落ちてしまったかもしれない。そうい、私は自由な体を引きずってタンスの裏や隙を必に覗き込んだけれど、どこにもない。健が子供の頃にいた似顔絵が貼られたあの古びた菓子箱。私が夫とのいを刻み、自分の葬儀費用のために費を削り、をして貯めてきた切な100万円。
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私のそのものと言ってもいい。あの箱が忽然と姿を消していた。
「嘘よ……。確かにさんが来るまではここにあったのに……」
私は縋り付くようにして狭い部を探し回った。押入れの、布団の、台所の戸棚。どこをどう探しても、あの箱は見当たらない。
汗が背を伝え、膝の震えが止まらなくなった。棒。その吉な2文字がをよぎるけれど、今この部に入ったのは私以にはさんだけだ。
「いいえ、そんなはずはないわ。彼女があんな古びた箱を盗むはずがないもの」
私は必に否定したけれど、あの箱が消えたという事実はあまりにく私にのしかかってくる。の寄り所を失った喪失と得体のれない恐怖。窓のから吹き込む隙が、先ほどよりも段とたくじられた。
暗に包まれ始めた部ので、私はただ空っぽになったタンスのを、涙でかすんだ目で見つめ続けることしかできなかった。
あの子に迷惑をかけたくないと誓った私の最の砦。それが何の触れもなく、音もてずに奪われてしまったのだ。
盤:失われた絆と忍び寄る危
眠ることもできないまま夜がけた。目を閉じれば空っぽになったタンスのの景が瞼の裏に焼きついてれない。あの箱は私と夫のそのものだった。
どうしても諦めきれず、私は震える指でスマートフォンの画面をなぞった。
さんの番号を呼びす。