"全員が揃えた同じ嘘" 第19話
先は子ではなく、自分のでしっかりとすりのにち、潮に吹かれていた。 その隣には、が寄り添っている。 の横顔には、もう過の霊に怯えるは微もなかった。
「律君」
綾が私の隣に来て、缶コーヒーを差しした。 受け取ると、まだ温かかった。
「ありがとうね。あなたが、あのを捨てないでいてくれたから」
「僕じゃないよ。みんなが、のどこかでずっと待ってたんだ。あの嘘を、本当の言葉に直すを」
くで、の防災無線から夕方を告げる鐘の音が流れてきた。 愁を帯びた『赤とんぼ』のメロディが、に乗って静かに響き渡る。
先が振り返り、私たちに向かって微笑んだ。 その笑顔は、の、満の桜ので「、よろしくね」と言ってくれたと、まったく同じ、かなに満ちていた。
「さあ、みんな」
先はし悪戯っぽく笑って、言った。
「もうすぐが暮れるわ。寄りしないで、気をつけておうちに帰りなさい」
越しの、先からの最の号令だった。 私たちは顔を見わせ、誰もが涙を浮かべながら、満面の笑みで答えた。
「はい! さようなら、倉先!」
数、緑ヶ丘学の旧舎は、の轟音とともに取り壊された。 あの暗かったも、鉄扉も、錆びたチェーンの破片も、すべて瓦礫のへと消えり、跡には遮るもののない、青空が広がったという。
だが、私たちの胸のには、もう何の暗も残っていなかった。 偽りの「午」は終わりを告げ、私たちの本当のが、穏やかなののを、を向いて静かにみ始めていた。