"十年前に死んでいた夫" 第2話
寄りのない方で、警察を通じて旅として続きが取られ、ご遺体は区の指定葬へ送られました。その点で、このカルテ番号は『除籍』として凍結されているのです」
私はけなかった。 息の仕方を忘れたように、を半きにして平野課を見ていた。
「何を……何を仰っているんですか」 ようやく絞りした声は、震えていた。
「歳? そんなはずはありません。私の夫は、くなった、歳でした。髪混じりで、背がし丸くて……なら、歳です。代の青であるはずがありません!」
「ですが、番号はこのカードのものです」 平野課はプラスチックのカードを指先で叩いた。
「当院の診察券は、再発であっても度登録された番号を別の患者様に使い回すことは絶対にありません。この番号は、におくなりになった、その代の佐伯孝之様だけのものです」
「そんな馬鹿な話があるわけないでしょう!」 私はわずちがりかけた。机ののが、私のの圧でわずかに揺れる。
「私は、夫の面倒を見てきたんですよ! この病院にも何度も連れてきました! 薬だって、この病院の処方箋で……」
そこで、私の声が止まった。
記憶が、のようにの芯を通り抜けていった。 処方箋。 そうだ、夫はいつ、最にこの病院の診察へ入っただろうか。
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「奥様」 平野課が、静かに言った。
「お当たりはおありですか。過、このカードを使って当院の通常来を受診された記録は度もありません」
「そんなはずは……」
「ただ、例があります」 平野課は元のプリントをめくった。
「夜の窓です。当院では緊急の、保険証をお持ちでない患者様でも、全額自己負担の現払いを原則として、応急処置や数分のお薬の処方をうことがあります。記録を遡りますと、に、回、夜にこの番号を告げて受診され、検査や入院を頑なに拒否して、気管支拡張剤と鎮痛剤だけを処方されて全額を現で支払って帰られた記録だけが、別枠の会計ログに残っていました」
「全額……現で……」
「はい。保険証の提示を求められても、『忘れた』『元にないから全額払う』とおっしゃって、度も健康保険を通していらっしゃいません。通常の来であれば、初診に厳格な元確認や保険証の登録がわれますが、夜の救急窓では、目のの患者の苦痛を取り除くことが最優先されます。その男性は、毎回違う当直の若い医師に『いつもの薬をくれればいい、入院はできない』と言い張り、決して詳細な検査を受けようとしなかった」
平野課の鏡の奥の目が、すっと細くなった。
「奥様。あなたが『夫』と呼んでおられるその男性は、体、誰だったのですか」
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その問いは、私の胸の真んにく突き刺さった。 答えられなかった。 唇がわなわなと震え、指先が急速にたくなっていく。
のにんだ歳の男。 その男の名が記された診察券を財布に入れ、、私の隣で穏やかに息をし、苦しそうに咳をしていたあの。
「……私の、夫です」 私は掠れた声で言った。それ以の言葉をらなかった。
「私と緒に暮らしていた、佐伯孝之です」
平野課はくため息をつき、元のカードを封筒に収めた。
「奥様のお気持ちは察しますが、当院としては、既に処理されている患者様の名で、たな診断や細を再発することは法に能です。それどころか、の診察券を図に利用して医薬品の処方を受け続けていたとなれば、これはな元詐称、あるいは詐欺の疑いがじる事態です」
「詐欺……? 主は、円だって誤魔化していません! 薬代だって、検査代だって、全部言われた通りの額を現で払っていました!」
「ええ、銭な被害が病院側にないことは確認できています。だからこそ、私たちも警察に即座に通報することは控えております」
平野課はちがり、ドアのノブにをかけた。
「まずは、ご自宅でご主の公な分証をお探しください。マイナンバーカード、運転免許証、あるいは健康保険証。
それらをお持ちいただければ、当院としても警察や政と相談ので、正式な続きを検討いたします。