"席次表から消された姉" 第1話
ホテルのティーラウンジに流れる優雅なクラシック音楽が、その瞬、の奥でひどく障りな雑音に変わった。
目のの丸テーブルには、純のに箔押しが施された披宴の席次表が広げられている。 プランナーから渡された最終確認用の原稿だった。郎側と婦側、それぞれの円卓に誰を座らせるか、肩きに誤りはないか。結婚式をヶに控えた私たちは、週末の午を使ってその最のすりわせをしていた。
「……翔太さん、今、何したの?」
私の声は、自分でも驚くほど乾いていた。
婚約者である鈴翔太は、にした赤のゲルインクボールペンを指先で弄びながら、悪びれもせずに言った。
「見ればわかるだろ。消したんだよ」
席次表の婦側、親族席の最列。 そこには、私のたったの族の名が印刷されていた。
『婦姉 斎藤綾』
その文字の真に、太い赤の線が、定規も使わずに乱暴に引き抜かれていた。 まるで、最初からそこにしてはいけなかった違いを塗りつぶすかのように。
「どうして消すの? お姉ちゃんだよ? 私の唯の肉親だよ。両親がくにくなってから、学をるまでずっと面倒を見てくれたのは綾さんなんだよ。呼ぶに決まってるじゃない」
指先が震えるのを隠すため、私はテーブルクロスので膝ののスカートをく握りしめた。
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翔太はため息をつき、アイスコーヒーのグラスについた滴をペーパーナプキンで拭った。その仕は、いつも通りの育ちの良さを装っていたが、元には隠しきれない苛ちが滲んでいた。
「美奈、声を落とせよ。周りに聞こえるだろ」
「理由を聞いてるの。納得できる説をして」
「母さんと相談した結果だ」
翔太は線を私の目からわずかに逸らし、席次表の向こう側、郎側の親友や親族が並ぶ円卓を指先でトントンと叩いた。
「うちの親戚、見てみろよ。伯父は元官僚だし、従兄は商社の役員だ。父さんの仕事関係の来賓だって、元医師会の理事や代議士の援会クラスがずらりと並ぶんだ。鈴の男の結婚式なんだよ。単なる内輪のパーティーじゃない。ととの格の釣りいってものがあるんだ」
「それがお姉ちゃんと何の関係があるの? 姉は介護福祉士だよ。特別養護老ホームで真面目に働いて、現のリーダーも任されてる、派な仕事じゃない」
「だから、それがダメなんだって」
翔太は吐き捨てるように言った。その声のたさに、私の臓がきゅっと縮みがった。
「介護士だろ? するに、の寄りのの世話をしてるじゃないか。爪のに排泄物の臭いを染み込ませているようなを、あのに呼べるわけないだろ。
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母さんもはっきり仰ってたよ。『あちらのお姉様のご職業、し考え直したほうがよろしくて? もしご親戚や来賓の方々にれたら、がの品格に関わりますわ』ってね」
ので、何かが音をてて弾けんだ。
「品格……? のの世話って……お姉ちゃんがどんないでその仕事をしてるか、あなたってるの? がきるで番変で、誰かが絶対にやらなきゃいけない尊い仕事だよ。それを、臭いだなんて……」
「綺麗事を言うなよ、美奈」
翔太は眉をひそめ、さも分別のあるが聞き分けのない子供を諭すような、傲な声音を作った。
「世体ってものを考えろよ。結婚式は社会なプレゼンテーションのなんだ。おがうちのに嫁いでくる以、鈴の『格』にを塗るような素は排除しなきゃいけない。おの姉さんを全否定してるわけじゃないよ? ただ、あのにそぐわないって言ってるだけだ。当は『急な研修で席できなくなった』とでも言っておけばいい。席はダミーで空けておくか、適当な友で埋めれば済む話だろ」
「嘘をつけって言うの? 自分の結婚式で、育ててくれた実の姉のを隠して、嘘をつけって言ってるの?」
「おのためをって言ってやってるんだ!」
翔太の語気がまり、隣の席でアフタヌーンティーを楽しんでいたマダムたちがちらりとこちらを盗み見た。
翔太はそれに気づくと、すぐに柔らかな笑みを貼り付け、声を潜めて私の元にを乗りしてきた。