"席次表から消された姉" 第7話
「おい、言葉を選べよ!」
翔太が声をげ、テーブルをく叩いた。グラスの赤ワインが激しく波打ち、テーブルクロスに滴、赤い染みを作った。
「脅しただと!? こっちはあのアパート育ちの女に、鈴という流の庭と関わる会を与えてやったんだぞ! 父さんの世話をし伝ったくらいで、まるで恩みたいな顔をしやがって。挙句の果てに、妹の結婚式にまでしゃしゃりてこようとするなんて、図々しいにも程があるだろ!」
男の顔から、私がしていたはずの理な面は完全に剥ぎ取られていた。 そこにいたのは、自分よりのいを見し、都のいい具として使い捨てることになんの痛痒もじない、傲で酷な選民そのものだった。
「体な、介護なんて誰にでもできる底辺の仕事だろうが!」
翔太は吐き捨てるように言った。
「専職だ何だと偉そうに講釈垂れてるが、はの排泄物を片付けるだけの作業だ。そんな仕事を誇らしげに語るようなを、僕の親戚や来賓のに晒せるわけがないだろ。母さんの言う通りだ。あいつはあの、鈴に恩を売って式に乗り込み、流階級の仲入りをした気になりたかっただけなんだよ!」
胃の腑から、どす黒い吐き気がせりがってきた。 の善を、族をう内の犠牲を、ここまで醜悪に歪めて解釈できるが、この世にするのか。
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私は震える唇を噛み締め、それ以、何も言わなかった。 これ以この男と話しても、言葉が汚れるだけだった。 私が黙り込むと、翔太は自分が論破したとでもったのか、ふんとを鳴らし、再びワイングラスをに取った。
「わかればいいんだよ。とにかく、席次表の姉貴の名は消す。当は親族の誰にも紹介しない。それが嫌なら、美奈、この結婚自体を考え直してもいいんだぞ? 式のキャンセル料、何百万になるかってるよな?」
脅しだった。 世体と違約の圧で、私を完全に屈させようとする卑劣な。
「……もう寝るね」
私はそれだけを呟き、ベッドルームへ向かった。 背で、翔太が満そうにワインを喉へ流し込む音が聞こえた。 その夜、私はセミダブルのベッドの端で、背を丸めてもできないまま、たい夜けを待った。
* * *
翌週の曜。 胸のに黒い澱を抱えたまま、私は丸の内にある輸入建材メーカーのオフィスで、類作成の業務をこなしていた。 パソコンの画面を見つめていても、考は何度ものへと引き戻される。
姉が言っていたこと。 翔太が吐き捨てた暴言。 両者の言い分は、あまりにもかけれていた。どちらが真実を語っているのか、私のはすでに答えをしていたけれど、それを裏付ける決定な事実が必だった。
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午過ぎ。オフィスの固定話が鳴り、総務の女性が私の席へやってきた。
「斎藤さん、受付にお客様がいらしてますよ。『鈴』様とおっしゃる、とてもお着物の似う品なご婦ですけれど……」
背筋にがった。 冴子さんだ。
アポイントもなしに、私の職に直接乗り込んできたのだ。 胸騒ぎを覚えながら階のエントランスホールへりると、ロビーのソファに、淡い鶯の紬の着物を隙なく着こなした冴子さんが座っていた。元には、名百貨の商サロンの袋が置かれている。
「お義母様……どうされたのですか、急に」
私が声をかけると、冴子さんは扇子を畳むような優雅な所作で顔をげ、が咲くような笑みを浮かべた。
「あら、美奈さん。お仕事にお邪魔してごめんなさいね。くのホテルで本踊のお稽古がございましたの。しだけ、お茶でもいかがかしら。お式の打ちわせのことで、美奈さんとふたりでお話ししたいといまして」
拒絶を許さない、柔らかくも無を言わせさぬ圧力。 私は司に「し私用で席をします」と断りを入れ、ホテルの階にある格式いティーラウンジへと案内された。
平の昼がり、静まり返ったラウンジにはクラシックの弦楽奏が静かに流れている。 仕が運んできた杯千円以するダージリンティーの湯気を見つめながら、私は膝ので指を組んだ。