"席次表から消された姉" 第12話
翔太と冴子さんの目を盗み、克己さんに直接会う。 そこで何が語られようと、私はこの目で真実を確かめなければならなかった。
* * *
翌、曜の午。 私は会社に半休を取り、摩川沿いの宅を歩いていた。
のたいが、川沿いの枯を激しく揺らしている。 平の昼がりのにはもまばらで、折通り過ぎる送迎のエンジン音だけが静かに響いていた。
やがて見えてきたのは、アイボリーの階建ての控えめな建物だった。 『摩リハビリテーション・デイケアセンター』とかれた板のにち、私は呼吸をひとつした。胸の鼓が元で激しく脈打っている。
自ドアをくぐると、のぬくもりとともに、消毒液と緑茶のりが漂ってきた。 広々としたフロアでは、数の齢者が理学療法士の指導のもとでゴムバンドを使ったリハビリをっていた。
受付の女性に声をかける。
「あの、すみません。利用者の鈴克己さんのご族の……いえ、息子の婚約者の斎藤と申します。今、克己さんはこちらにいらっしゃいますでしょうか」
受付の女性は怪訝そうな顔をすることもなく、穏やかに微笑んだ。
「鈴克己様ですね。ちょうど先ほど午の歩訓練が終わって、あちらの庭のテラスでお茶を召しがっていらっしゃいますよ。
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ご案内しましょうか?」
「いえ、丈夫です。ありがとうございます」
私は会釈をし、ガラス戸の向こうにあるテラスへと向かった。
の柔らかい差しが差し込む庭のベンチの脇に、台の子がまっていた。 のチェック柄のひざ掛けを腰に巻き、両で温かい湯呑みを抱えている髪の男性。 以、翔太のスマートフォンで見せてもらった写真よりも、ずっとさく、痩せ細って見えた。 けれど、背筋を微かに伸ばし、くの青空を見つめるその横顔には、かつて厳格な技術者として企業を支えてきた男の矜持のようなものが滲んでいた。
「……お義父様」
私が恐る恐る声をかけると、男性はゆっくりと首を巡らせた。 側の顔面にわずかな麻痺が残っているものの、その瞳はく、澄んでいた。
「……どなた、かな」
掠れた、けれど芯のある声だった。
「初めまして。翔太さんの婚約者の、斎藤美奈と申します」
私が名乗った瞬、克己さんの表が劇に変わった。 湯呑みを持つ両が激しく震え、のお茶が波打って溢れそうになる。 その瞳にったのは、びでも歓迎でもなかった。 剥きしの、息を呑むような恐怖と、痛の悔だった。
「……さい、とう……? 美奈、さん……?」
「はい」
「逃げ……なさい」
克己さんは震えるで、私の首を掴もうとした。その指先は骨ばっていて、たかった。
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「美奈さん、ここへ……来ちゃいけない……。あの男と、あの女の元へ、っては……」
「お義父様、落ち着いてください。私、お話しを聞きに来たんです。の、病院で何があったのかを……」
私が克己さんのを取ろうとした、そのだった。
「――おい、美奈!!」
背から突き刺さるような声が響き渡った。 フロアの静けさを切り裂くその声に、リハビリをしていた齢者たちやスタッフが斉にこちらを振り返った。
臓が凍りついた。 振り返ると、テラスへ通じるガラス扉を乱暴にけ放ち、翔太が血相を変えて股で歩み寄ってくるところだった。
なぜ、ここにいるのか。 翔太はダークグレーのスーツのコートを翻し、鬼のような形相で私の腕を力任せに掴みげた。
「痛っ……! 翔太さん、して!」
「お、何やってんだよ! こんなところで何をしてるんだ!」
骨がきしむほどのい力だった。首に爪がい込み、鋭い痛みがる。
「してよ! 私はお父様にご挨拶を……」
「挨拶だと!? ふざけるな!」
翔太は周囲の線も構わずに鳴り散らした。その目は血り、唾をばしている。
「母さんから連絡があったんだよ! おが午から会社を休んだって、職のから聞いたってな! まさかとったら、本当にここへ嗅ぎ回りに来てたのか!」
冴子さんだ。 私の職にまで探りを入れて、私のを監していたのだ。
「ののプライベートを勝に嗅ぎ回って、何様のつもりだ! 病気でのった寄りに、あることないこと吹き込んで、うちのを引っ掻き回す気か!?」