"席次表から消された姉" 第18話
れだった。 どこまでも自分の保、自分の体面、自分ののことしかにない。 この男のに、私へのなど最初からしなかったのだ。 私というは、鈴の見栄のトロフィーであり、介護員を調達するための便利な具に過ぎなかった。
私はすがりつく翔太のを、たく払いのけた。
そして、バッグの奥底から、あのプラチナの婚約指輪を取りした。 冴子さんが「鈴の嫁として恥ずかしくない最級の輝きを」と指定し、何百万円もの値札がついていたダイヤのリング。
私は座卓の真ん、冴子さんの目のに置かれていた、湯気のちるい緑茶の湯呑みを見つめた。
指先を緩める。
チャポン。
濁った緑の茶のに、無質なプラチナが音をてて沈んでいった。 湯ので、ダイヤのが鈍く歪む。
「……美奈、さん……?」
呆然と見げる冴子さんに、私は最の言を告げた。
「この指輪、お返しします。 どうぞ、あなた方の莫な借の返済のしにでもなさってください。 ……私たちの婚約は、今この瞬をもって、完全に破棄します」
「待てよ! 美奈、くな!」
翔太が叫び、ちがろうとした。 だが、そのを遮るように、障子が勢いよくにけ放たれた。
「――お静かに願います」
そこにっていたのは、松籟亭の女将だった。 そのろには、騒ぎを聞きつけて廊に集まっていた、隣の広の客たちの姿があった。
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元医師会の鎮、本踊の鎮、冴子さんが頃から「わたくしのお茶仲ですの」と自げに名を挙げていた名士たちだった。
「す、鈴さん……? 体、何事ですの……?」
「横領って……介護放棄って、本当なんですの……?」
集まった々のえ切った、軽蔑と好奇の線が、にへたり込む冴子さんと、元をふらつかせる翔太の全に突き刺さった。
「あ……あああ……」
冴子さんは顔を覆い、畳のに崩れ落ちた。 必に守り抜こうとしていた『世体』という名の虚構が、彼女が最も誇りとしていた所で、最も見られたくない々の目ので、音をててっ端微に砕け散った瞬だった。
「克己様、おの配がっております」
女将は鈴親子の無様には目もくれず、克己さんに向かって々と、敬を込めて礼した。 克己さんはゆっくりと頷き、子へと腰をろした。
「こう、美奈さん、綾さん。……こんな所には、秒たりとも居したくない」
綾が静かにハンドルを握り、子を押して歩きす。 私は度も振り返ることなく、その背に続いて部をた。
背から、翔太の絶望な慟哭と、冴子さんの狂乱した切り声が聞こえていたが、それらは玉砂利を踏みしめる私たちの音のに、静かに掻き消されていった。
* * *
のたいが、料亭の庭の松を揺らしていた。
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タクシーに乗り込むと、内の柔らかなが、凍りついていた私の体をじんわりと包み込んだ。
「……終わったね、美奈ちゃん」
隣で、綾がぽつりと呟いた。 その横顔を見つめると、張り詰めていた糸が解けたのか、姉の目から筋の涙が静かに頬を伝い落ちていた。
「お姉ちゃん……」
「ごめんね。私のせいで、あなたの結婚をめちゃくちゃにしちゃった……」
「何言ってるの!」
私は姉の細い肩を抱きしめた。
「お姉ちゃんが謝ることなんて、何ひとつないよ。守ってくれたんでしょう? 私を、あの悪魔みたいなから。……本当にありがとう、お姉ちゃん」
部座席で、克己さんも静かに目を細め、私たちのをねるように握りしめてくれた。 そのの温もりが、どんな価なダイヤモンドよりも温かく、私の胸の奥くまで染み渡っていった。
* * *
現実の清算は、劇な破滅の瞬よりも、そのに訪れる徹な活の崩壊としてんでいった。
松籟亭での騒は、瞬くに域の流コミュニティや社交界へ広まった。 『嫁の姉に介護を押し付け、父親の財産を着しようとした名』の噂は、尾ひれがついて社交界を駆け巡り、冴子さんが通い詰めていた百貨の商担当者は、信用枠の見直しを理由に事実の取引止を告げてきた。 本踊の会からも退会を促され、あれほど群がっていた「お友達」
は、誰として彼女の話になくなった。