"中卒の清掃員をクビにした翌日" 第5話
「はい」
「なぜ?」
「え?」
「例えば、誰も見ていない倉庫の」
「誰も褒めない械」
「そういう所でも、君は同じように丁寧にやるのか?」
結は当たりのように答えた。
「もちろんです」
「どうして?」
結はし笑った。
「だって、そこを使うがいるからです」
は黙った。
「お客様が見る所だけ綺麗にしてもがないとうんです」
「見えない所がちゃんとしているから、見える所も綺麗になるんじゃないでしょうか」
その言葉に、はゆっくり頷いた。
「……君は、本当にそうっているんだね」
「はい」
迷いのない返事だった。
そのの夕方。
は誰もいない廊でスマートフォンを取りした。
画面には、の秘から届いたメッセージ。
【調査資料を確認しました】
【杉マネージャーについても追加調査です】
は返信した。
【続けてくれ】
【ただし、川さんについては本に気づかれないように】
送信。
そしてスマートフォンをしまった。
郎。
彼には、この百貨に来た理由があった。
単なる清掃員体験ではない。
社から見える景だけでは分からないものを見るため。
現の声を聞くため。
社員たちが本当に何を考えて働いているのかるため。
そしてもうつ。
次の代を任せられるを探すためだった。
だが、はまだ確信していなかった。
結が本当にその物なのか。
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だからこそ、彼は見続けていた。
誰もいない所で。
誰にも評価されない仕事をする姿を。
誰かに優しく声をかける姿を。
理尽な言葉を受けても、をまない姿を。
数。
事件が起きる。
午11。
1階化粧品売り。
結が清掃をしているところへ、杉が現れた。
にはタブレット。
表はいつものようにたかった。
「川さん」
「はい」
「し話があります」
結はを止めた。
杉は画面を見せる。
そこには、結の記録が並んでいた。
【顧客対応 5回】
【作業超過】
【担当】
杉は淡々と言った。
「あなたは何度注しても改善しませんね」
結の顔からし血の気が引いた。
「でも、お客様が困っていて……」
「またその話ですか」
杉はため息をついた。
「川さん」
「あなたは勘違いしています」
「優しさと、勝なは違います」
その言葉に、結は黙った。
杉はさらに続けた。
「来週から配置を変更します」
「え?」
「売り清掃かられてください」
「バックヤード担当になります」
結は驚いた。
「バックヤード……」
「倉庫、械、従業員トイレ」
杉はたく言った。
「目につかない所です」
その瞬。
しれた所にいたが、静かに顔をげた。
そして初めて。
老の穏やかな表ではなく。
経営者としての鋭い目を見せた。
「……なるほど」
はさく呟いた。
この、まだ誰もらなかった。
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この配置転換が。
杉自の運命を変えるきっかけになることを。
「売り清掃かられてください」
杉亮介の言葉は、結の胸に静かに沈んでいった。
鳴られたわけではない。
責められたわけでもない。
だからこそ、そのたさが余計に苦しかった。
「……分かりました」
結はさくをげた。
本当は聞きたかった。
なぜですか、と。
5、毎欠かさず働いてきたことは見てくれていなかったのですか、と。
でも、言葉にはしなかった。
言ってもがないとったからだ。
杉はそんな結の様子を見ることもなく、タブレットを操作していた。
「来週からしい担当表を渡します」
「はい」
「それと、余計な顧客対応は今切禁止してください」
「……はい」
「分かりましたね?」
「分かりました」
結が答えると、杉は満したように頷いた。
そして、そのままっていった。
結はしばらくそのにち尽くしていた。
に持った清掃用クロス。
いつもなら自然にくはずのが止まっている。
「私は……違っていたのかな」
さく呟いた。
その声を聞いていたがいた。
だった。
しれた所で、静かに2のやり取りを見ていた。
***
そのの昼休み。
従業員堂。
いつものように結はさな弁当箱をいた。
しかし、いつもと違って箸がまなかった。
は向かいに座りながら、そんな結を見ていた。
「川さん」
「はい」
「辛くないのかい?」
結はし驚いた顔をした。
「何がですか?」
「今のことだよ」