"中卒の清掃員をクビにした翌日" 第9話
誰も気に留めなかった老。
し背が曲がり、古い作業着を着て、静かに清掃をしていた男性。
その物が。
この昭栄百貨グループの最責任者だった。
「……嘘でしょう」
誰かがさく呟いた。
「さんが……会?」
「そんな……」
館内にはざわめきが広がった。
しかし、は周囲の線を気にする様子もなかった。
いつものように穏やかな表。
ただ違うのは。
その姿に、経営者としての圧倒ながあったことだった。
田事部は緊張した顔でづいた。
「会、本は突然のお越しで……」
は静かに頷いた。
「予定を変更しただけだ」
「し確認したいことがあってね」
田は瞬、表を固くした。
「確認……ですか?」
は館内を見渡した。
「3ヶ」
「私はこので働いた」
「清掃員として」
田は息を呑んだ。
「まさか……」
「そうだ」
は答えた。
「私は、この百貨の本当の姿を見るために来た」
その声は静かだった。
しかし。
誰も逆らえないみがあった。
***
30分。
最階の会議。
いテーブルの奥。
は座っていた。
その隣には田事部。
秘。
役員たち。
そして。
呼びされた杉亮介。
杉が部に入った瞬。
顔が変わった。
そこにいた老。
昨まで自分が「清掃員」として扱っていた物。
郎。
「……会」
杉の声が震えた。
は顔をげた。
「久しぶりだね、杉君」
「……」
杉は言葉を失った。
広告
数。
自分はこの老を見ていた。
倉庫。
従業員堂。
清掃エリア。
何度もすれ違った。
しかし。
度も敬を払わなかった。
「まさか……」
杉は呟いた。
「清掃員として……この会社に?」
「そうだ」
は頷いた。
「3ヶ」
「現を見るためにな」
杉の額に汗が浮かぶ。
嫌な予がした。
は机のに冊のファイルを置いた。
「これは何だとう?」
杉は答えられない。
「君の記録だ」
ファイルをく。
には量の資料。
。
所。
発言内容。
勤務評価。
すべて細かく記録されていた。
「川結さんへの対応」
が言った。
杉の表が変わる。
「彼女について、君はこう評価した」
は資料を見る。
「業務効率が悪い」
「担当がい」
「組織適性がい」
枚ずつめくる。
「しかし」
は顔をげた。
「君は、番切なものを評価していない」
杉は黙った。
「彼女が何をしていたか」
「本当に見ていたのか?」
杉は答える。
「もちろんです」
「私は管理者として……」
は静かに遮った。
「違う」
「君は数字を見ていただけだ」
会議が静まり返る。
「彼女は」
は続けた。
「誰も見ていない所でもを抜かなかった」
「お客様が困っていれば助けた」
「には丁寧に仕事を教えた」
「そして」
しを置く。
「自分が傷つけられても、相を悪く言わなかった」
の声には力があった。
「それが、昭栄百貨が120切にしてきたものだ」
広告
杉は反論した。
「ですが会」
「会社は利益をさなければ続できません」
「だけでは経営できません」
は頷いた。
「その通りだ」
「利益は必だ」
「効率も必だ」
「しかし」
は杉を見る。
「を切り捨てることと、効率化は違う」
杉は黙る。
「君は、川さんをなだとった」
「卒だから」
「契約社員だから」
「しかし」
は言った。
「彼女ほど、この会社の理を理解しているがいるか?」
杉の顔が歪んだ。
***
その。
会議のスクリーンに映像が表示された。
防犯カメラの映像だった。
そこには。
誰もいない朝の館内。
で清掃する結の姿。
朝5。
まだ誰もいない入。
彼女はを磨いている。
次の映像。
夜く。
閉の売り。
最の確認をする結。
次の映像。
齢のお客様を案内する姿。
は言った。
「これは君が見ていなかっただ」
「君が評価対象だとっていただ」
杉は画面を見る。
何も言えなかった。
は続ける。
「君は言ったね」
「卒の契約社員なんて、いくらでも替えがいると」
杉の肩が震えた。
「では聞こう」
「昭栄百貨に、彼女と同じは何いる?」
沈黙。
誰も答えられなかった。
は静かにちがった。
「杉君」
「君は能力がないではない」
「むしろ、仕事はできる」
その言葉に杉はし顔をげる。
しかし。
次の言葉で表が凍った。
「だが、を見る力がりなかった」
***
杉は必に言った。
「会」
「私は会社のためをって……」
は首を振った。
「違う」