"恩人弁護士の不可解な書類" 第4話
再されたのは、佐伯が投稿した画と、榎本が鉄会社から証拠保全続きで取り寄せた、駅ホームおよび内の完全な防犯カメラ映像だった。
画面が分割され、同の刻が秒単位で並んで表示される。
「相方は『単なる常の記録』と主張していますが、この防犯カメラの映像をご覧ください。申が体勢を崩した女性を支え、自ら席を譲ろうとちがったのは、分秒です。しかし、相方が公した画では、まさにその秒の直、分秒で図に映像がカットされています」
榎本の元が、淡々とキーボードを叩く。 画面が切り替わり、佐伯が運営する別のアカウントのSNS投稿が映しされた。
『今の収穫。丸の内のOLが妊婦突きばしたっぽく見えるアングル撮れたわ。これ絶対伸びる。広告費あざす』
調の空気が、瞬で凍りついた。 佐伯の顔から、血の気が引いていくのが目に見えてわかった。
「これは過失による撮などではありません」
榎本の声は、鳴るわけでもなく、静かで、しかし部の隅々まで染み渡るような徹なみを持っていた。
「確な作為と営利目をもって、無実の民の尊厳を図に踏みにじり、社会なに追いやった悪質な法為です。名誉毀損の刑事告訴状もすでに作成済みです。
広告
これ以の誠実な弁解を続けるのであれば、即座に調を取りげ、本訴および刑事続きへと移します」
佐伯の代理が慌てて佐伯の元で何かを囁いた。 佐伯は額に脂汗を浮かべ、両をわなわなと震わせていた。
「ま、待ってください……! 示談に……示談にしてください! 会社にだけは、科がつくだけは勘弁してください……!」
佐伯は子から転げ落ちるようにして、テーブルにを擦り付けた。
結果は、完全な勝利だった。
佐伯は、自のすべてのアカウントで事実無根のデマであったことを認める謝罪文を固定掲載すること。 元にあるオリジナルデータおよび複製を完全に破棄すること。 そして、私に対して慰謝料として万円を即括で支払うこと。 調調にその条項が次々とき込まれていった。
裁判所の玄関をた、空は抜けるような青空だった。 のたいが、照った私の頬を優しく撫でた。 ヶ、ずっと喉の奥に刺さっていた魚の骨が、ようやく取れたような気がした。
「……ありがとうございました、榎本先」
私はくをげた。涙が面に落ちて、乾いたアスファルトに黒い染みを作った。
「本当によかった。矢野さんが諦めずに、あの記録を残していたからです。胸を張ってください。あなたは何も悪くなかったんですから」
広告
榎本はそう言って、初めて優しく目を細めて笑った。 その笑顔を見た、私はから救われたとった。 万円のうち、成功報酬として榎本に支払ったのは万円ほどだった。 割にわないとの弁護士に断られ続けた面倒な案件を、彼は最まで私の隣で戦い抜いてくれた。 私にとって、榎本は単なる代理ではなく、のどん底から引きげてくれた恩だった。
それからヶが過ぎた。 季節は完全にへと移り変わり、にはたい枯らしが吹き荒れていた。
ネットの騒ぎは、佐伯の謝罪文の掲載とともに嘘のように沈静化した。 度失った信用のすべてが戻ったわけではなかったが、それでも私の活はしずつを向き始めていた。 しいまいを見つけ、昼は次の就職先を探しながら、夜は神田のさなコンビニで週に、レジ打ちと品しのアルバイトを始めた。 は決してくなかったが、自分の名を呼ばれ、普通に働き、誰にもを投げられないというだけで、泣きたくなるほどありがたかった。
の旬、の職で唯、私を配してくれていた派遣仲の由里から連絡があった。
『真、久しぶり! 々変だったとうけど、体調どう? もし落ち着いてたら、神保町あたりでご飯でもべない?』
由里は、私が解雇されたも、周囲の目を盗んで私のロッカーの荷物をまとめるのを伝ってくれた優しい輩だった。