"恩人弁護士の不可解な書類" 第7話
京方裁判所。 佐伯との調で訪れた簡易裁判所とは異なり、同庁舎の建物は威圧なまでに巨で、徹な空気を放っていた。 荷物検査を抜け、エレベーターで民事記録の閲覧があるフロアへがる。
番号札を引き、カウンターで職員に恐る恐る尋ねた。
「あの……係属の事件の記録を、閲覧したいのですが」
鏡をかけた男性の記官は、械なつきで閲覧申請を差ししてきた。
「事件番号と当事者名はわかりますか? あと、あなたご自は当事者ですか、それとも利害関係ですか?」
「いえ、当事者ではありません。第者です」
「第者の、民事訴訟法第条の規定により、原則として閲覧は能ですが、プライバシーに関わる部分や非公指定されている類は閲覧できません。事件番号をいてください」
由里からもらった類にかれていた事件番号を、震えるで記入した。 申請数料の収入印を貼り、分証を提示する。 続きは淡々と、あまりにも事務にんだ。
待スペースのい子に座り、分ほど待たされた。 名を呼ばれてカウンターへ戻ると、茶いのファイルが置かれていた。 表には、黒いインクで事件番号と『原告 梨郁恵』『被告 株式会社〇〇商事、藤堂康則』と印字されている。
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「メモを取るのは自由ですが、カメラやスマートフォンでの撮は禁止です。コピーが必なは別途申請してください」
職員にそう告げられ、私は仕切られた閲覧ブースにファイルを持ち込んだ。
たい蛍灯の、ページをめくる。 梨郁恵さんが提した訴状、準備面、そして証拠説。 居酒で由里が見せてくれたのは、そのごく部に過ぎなかったことがわかった。
記録を読みめるにつれて、私の息は苦しくなった。
梨さんは、私と入れ替わりで派遣された総務事務だった。 歳。真面目で、自己主張が苦な性格だったらしい。 藤堂専務は、彼女に対して常に個な雑用を言いつけ、やがて経理のダミー伝票の作成を命じるようになった。 梨さんが「これは私の業務範囲ですし、税務も問題があるのではないでしょうか」とさく抵抗したから、執拗な嫌がらせが始まった。
私物の文具がゴミ箱に捨てられる。 な連絡事項だけが共されない。 ミスをでっちげられ、全社員のでにわたって罵倒される。 そして、精神に限界を迎えた彼女に対し、藤堂が言い放った言葉の数々が、陳述に詳細に記録されていた。
そのに、あの文章があった。
『甲第号証 元従業員の証言記録抜粋』
私は指を止め、その証拠説の添付類に目を凝らした。
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原本は黒塗りでマスキングされていたが、そこには確かにこう記されていた。
『申:元派遣社員(プライバシー保護のため氏名秘匿) 聴取:令 聴取所:榎本法律事務所 聴取者:弁護士 榎本拓』
。 それは、私が佐伯の盗撮画について、初めて神保町の榎本法律事務所を訪れた、まさにそのだった。
ので、何かが音をてて崩れ落ちた。
あの、私は泣いていた。 見らぬたちから向けられた悪に押し潰され、誰にも言えなかった会社の理尽を、すがるようないで榎本先に打ちけた。 榎本先は、静かにメモを取っていた。 『会社の汚いやりに、あなたがこれ以傷つく筋いはありません。全部、私に任せてください』 あの温かい声が、の奥で蘇る。
あれは、私を慰めるための言葉ではなかったのか。 私が吐きした痛みを、そので別の事件の「弾薬」として仕分けしていただけだったのか。
さらにページをめくると、訴訟代理の委任状が綴じられていた。 代理の坂井弁護士は、登録番号からして代半のベテランだった。 しかし、提された面の末尾にある作成者欄の跡、そしてフォントの配置や独特のレイアウトは、佐伯との調で榎本先が作成してくれた類と完全に致していた。
坂井弁護士は名を貸しているだけで、実際にこの訴訟を組みて、面をいているのは榎本先自なのだ。