"恩人弁護士の不可解な書類" 第13話
として勝に扱われたのではないか。
『私は誰も傷つけていません。助けようとしただけです』
あの、榎本先の事務所で絞りした自分の言葉が蘇る。
そうだ。私は何も悪くない。 悪いのは、を踏み躙って平然としている藤堂だ。 逃げ回って、怯えて、誰かにすがりついてきるのは、もう嫌だった。 自分の尊厳は、自分で取り返さなければならない。
私は鉄の駅へ向かった。 向かった先は、自分のアパートではない。 練馬の梨郁恵のアパートだった。
が完全に落ち、宅は底えのするに包まれていた。 古い造アパートの階段をがり、再び〇号のにつ。 部の窓からは、微かにかりが漏れていた。にいる。
私はインターホンを押さず、静かにドアを回ノックした。
「梨さん。矢野です」
返事はない。だが、ドアの向こうで息を殺す気配がした。
「さっきはごめんなさい。取り乱してしまって。……話を聞いてほしいわけじゃありません。これだけ、ポストに入れておきます」
私はカバンから、通の封筒を取りした。 佐伯との調でに入れた、あの謝罪文のコピーと、私の経歴をいたメモだった。
「私も、ヶまであなたと同じでした。ネットに嘘の画を流されて、仕事をクビになって、毎ぬことばかり考えていました。カーテンもけられなくて、コンビニのおにぎりのすら分からなくて……世界で自分だけがぼっちだとっていました」
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ドアの向こうの気配が、わずかに揺れた。
「藤堂専務が、あなたに何を言ったか、私には痛いほど分かります。『印鑑はあんたがで押したんだ。察して自分から引け』……あの言葉、私も言われました。あの男は、を追い詰めるのを完全にっているんです。あなたがいから壊れたんじゃない。あの男が、組織の力を使ってあなたを壊したんです」
たいが、アパートの放廊を吹き抜けていく。 私の声は、震えていたけれど、議なほど透き通っていた。
「榎本先は、あなたを救おうとしています。それは本当です。でも……私は、先の都のいい駒になるつもりはありません。あなたを救うためだけに、自分の活を差しす気もありません。ただ……あの藤堂という男に、私たちが使い捨てにされたまま終わるのは、どうしても許せないんです」
封筒を郵便受けの隙に差し込み、カサリと落とした。
「読んでみてください。気が向いたらでいいですから」
私が背を向け、階段へ向かって歩きしただった。
ガチャリ、とい属音がした。 チェーンがされる音。 続いて、ドアがゆっくりといた。
振り返ると、梨さんがのカーディガンを抱えるようにしてっていた。 先ほどよりも、その瞳の奥に確かなが宿っていた。 彼女の線は、郵便受けから覗く封筒と、私の顔を交互にき来していた。
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「……寒いので」
梨さんの唇が、かすかにいた。
「、入ってください。温かいお茶くらいなら、せますから」
通された畳の部は、驚くほど然としていたが、活の匂いがほとんどしなかった。 テーブルのには、精神科から処方された無数の薬のシートが並んでいる。 梨さんは震えるで気ケトルをセットし、物のティーバッグの緑茶を淹れてくれた。
は、向かいって座った。 梨さんは、私が渡した佐伯の謝罪文と、駅の防犯カメラの記録の写しを、い入るように見つめていた。
「……本当に、で戦ったんですね」
「じゃありませんでした。榎本先がいたから、戦えました。そこだけは、嘘じゃありません」
私は正直に言った。
「先は、あなたを助けたいで、私の話した言葉を無断で面に載せました。それは弁護士として許されないルール違反です。私は今でも先に対してっています。でも……あなたの境遇をって、先がそこまで焦っていた理由も、しだけ分かってしまった」
梨さんは、両で湯呑みを包み込み、湯気を見つめた。
「拓兄ちゃん……榎本先は、私の父がくなった、ずっと母と私を支えてくれたなんです。私が就職したも、誰よりもんでくれた。だから……私がこんなになって、会社に潰されそうになった、先は自分のこと以にってくれて……」