"レジ打ちの妻は恥ずかしい" 第18話
……それが、そんなに悪いことだったのか?」
翔平はテーブルに両肘をつき、額にを当てた。
「俺はおをしてたよ。、ずっと千と緒にいたかった。母さんのやり方はし引だったかもしれないけど、それだって俺たちの将来をってのことだったんだ。なのに……どうしてこんな、族全員を破滅させるような真似をしたんだよ。おは……俺たちののを、何だとってたんだ?」
その言葉を聞いた瞬、私は静かに、けれどく息を吸い込んだ。
最まで、この男は何も分かっていなかったのだ。 自分が何を壊し、何を冒涜したのか、その本質にミリも気づいていない。
「翔平」
私は彼の目を、まっすぐに見据えた。 逃げも隠れもしない、澄み切った私の線に、翔平の瞳が微かに揺れる。
「あなたは言ったわね。『妻に恥ずかしくないを与えてやりたかった』『俺の妻として恥ずかしくないようにしたかった』って」
「あぁ……そうだよ。男なら、誰だってそううだろ――」
「それが、あなたの言う『』なの?」
私の静かな声が、喫茶の静寂のに落ちた。
「あなたは、私というをしていたんじゃないわ。 あなたがしていたのは、『流企業のチーフである翔平』という自分の見栄を飾るための、都のいいアクセサリーよ」
翔平の唇が、さく震えた。
「私はね、、スーパーのレジにち続けてきた。
広告
を痛めながら、い荷物を運びながら、理尽なお客さんにをげながら、それでも毎誠実に働いてきたの。 そので稼いだおで賃を払い、税を払い、奨学を完済して、誰にも頼らずにきてきた。 それが、私のよ。私の誇りなの」
私は自分の両をテーブルのに広げた。 指先には、まだ段ボールの梱でついたさな古傷が残っている。
「でも、あなたは私のそのの労働を何て言った? 『銭数え』『底辺の仕事』『俺の同僚に恥ずかしくて言えない』って吐き捨てたわよね。 あなたが私の仕事を恥ずかしいとった瞬、あなたは私というの尊厳を、元から踏みにじったのよ」
「それは……世体の話であって、千自を否定したわけじゃ――」
「世体という言葉を使えば、のをで踏み躙ってもいいの?」
私の声は段と鋭く、けれど穏やかさを失わずに翔平の胸を射抜いた。
「もしあなたが本当に私をしていたなら、私が誇りを持って働いている姿を、あなたの友や同僚ので堂々と自するはずよ。『私の妻は、毎域のたちのために懸命働いている、自の女性だ』って胸を張るはずよ。 でも、あなたにはそれができなかった。 自分のちっぽけなプライドを守るために、私の仕事を辞めさせ、私の居所を奪い、私を庭という鳥籠に閉じ込めようとした」
広告
翔平は言葉を失い、喉を鳴らした。
「それだけじゃないわ」
私は徹に事実をねた。
「あなたは私の仕事を『恥ずかしい銭数え』と蔑みながら、その銭数えで私が円ずつ貯めてきた百万円の貯には、平然とを伸ばそうとした。 自分のの丈にわない計の借も、分相応な式の費用も、全部私の貯から吸いげて穴埋めしようとした。 ……翔平、あなたが求めていたのは『する妻』じゃない。 あなたの空っぽな見栄を側から飾り、そのツケを裏で黙って払い続ける、都のいいスポンサーであり、無料の政婦よ」
「ち、違う……俺は……!」
「違わないわ」
私ははっきりと断言した。
「あなたは、私をしていたんじゃない。 『自分を偉そうに見せてくれる、自分より格の女』が必だっただけよ。 そして、その勝な傲さのせいで、あなたのお母様は私の実に乗り込み、私の母の命を危険に晒した。 の命や尊厳よりも、自分の世体を優先するようなたちを……私は絶対に許さないし、緒にきていくことなんてんでもあり得ない」
翔平の顔から、完全に表が抜け落ちた。 弁解の言葉は、もうどこにも見つからなかった。 彼が、自分ので正当化し続けてきた「男の甲斐性」という名の欺瞞が、完全に々に砕け散ったのだ。
「……俺は」
翔平は両で顔を覆い、ボロボロと涙をこぼし始めた。
「俺は……全部、失ったよ……。