"何番まで落ちたら離婚するの" 第6話
「週ほどのことです。自習の利用が終わった、翔太君がで教員に残っていましてね。質問があるのかとって声をかけたら、勉のことではなかったんです」 「勉のことではない……?」
「はい。当には、受験期のストレスをケアするために、に度スクールカウンセラーが巡回してくるのですが……翔太君は、そのカウンセラーの先に、個な相談をしたいと言いしまして」
臓が嫌なね方をした。 あの翔太が、に音を吐く? 私のでは、どんなに過密なスケジュールでも「丈夫、楽しいよ」としか言わなかったあの子が?
「何を……相談したんですか?」
宮本先は度線を落とし、それから私の目を真っ直ぐに見据えた。
「庭内の法律相談のようなこと、でした」 「法律……?」
「ええ。『子供が学や塾で問題を起こしたり、成績が極端に落ちたりしたら、親って簡単に婚できなくなるんですか』と。そう、カウンセラーに尋ねたそうです」
面談の空気が、瞬で凍りついたようにじられた。 の奥で、キーンという鋭い鳴りが響く。
「翔太君は、非常に論理な子です。に泣き言を言うのではなく、まるで何かの判例を調べるかのように、淡々と聞いてきたそうです。『親が婚をいとどまる理由として、子供の教育環境の悪化や精神な定さは、法にどれくらい考慮されるのか』と」
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のを、槌で殴られたような衝撃がった。
昨夜の翔太の言葉。 『僕が位を取ったら、は婚するの?』 『何番まで落ちたら、は別れるの?』
あの子は、突発にあんなことを言いしたのではなかった。 点数を図に落とすに、わざわざ塾のカウンセラーにまで確認していたのだ。 自分の成績を悪化させることが、親の婚をい止めるための『盾』になり得るのかどうかを。
「お母様」 宮本先の声が、ひどくくから聞こえた。 「ご庭で、何か翔太君に精神な負担をかけるような変化はございませんでしたか? あの子は非常に聡です。聡すぎるがゆえに、の顔や、庭内の空気の歪みを、過剰なまでに敏に察してしまいます。もし、ご夫婦ので何か……」
「ありません!」 私は反射に、叫ぶように遮っていた。 「うちは……普通の庭です! 主は数がないですが、翔太の教育については私に任せてくれていますし、婚の話なんて度もたことはありません! 主が、勝に何か吹き込んだんでしょうか……!?」
宮本先はそれ以何も言わず、ただ痛ましいものを見るような、憐憫の混じった差しで私を見つめていた。 その線に耐えられなくなり、私は逃げるように面談をびした。
*
のれ渡った青空が、ビルをた私の目に痛々しいほど眩しかった。
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駅のロータリーをき交う々。ベビーカーを押す母親。談笑しながら歩くサラリーマンたち。 その誰もが、私とは別の世界をきているように見えた。
『普通の庭です』 宮本先に言い放った自分の言葉が、脳内で虚しく反響する。
普通? うちのどこが、普通の庭だというの。
胸にを当てると、悸がのからでも分かるほど激しく打っていた。 雅だ。 やはり、原因は雅にある。
雅はいつからか、庭ので完全に気配を消すようになった。 平は夜に帰り、休は「疲れているから」と斎に籠もるか、で当て所もなくかけていく。翔太のについて話を振っても、「おの好きにしろ」「あいつのはおのものじゃない」と、笑を浮かべるだけ。 会話らしい会話など、ここ数、翔太の模試の偏差値の報告以、交わした記憶がない。
もし――。 最悪の像が、黒いインクのようにのに滲みしていく。
雅は、に女がいるのではないか。 私に隠れて、本気でをていく準備をめているのではないか。 そして、その気配を、私よりも先に翔太がづいてしまったのではないか。
『るわけないだろうが』 昨夜の雅の、あの諦めきったたい横顔が蘇る。 あの態度は、何もらないの顔ではなかった。何かをひた隠しにし、私がそれに気づくことを恐れている者の顔だった。
「許さない……」