"何番まで落ちたら離婚するの" 第11話
それは――庭という密の、酷で精緻な『観測記録』だった。
見きごとにきの表が引かれていた。 端には付。 その隣には、翔太自のテストの点数と順位。 そして、その側には、戦慄するような項目がびっしりと並んでいた。
『父の帰宅』 『母の嫌(段階評価)』 『夕の会話のラリー数』 『が目をわせた回数』 『僕の成績についての言及の無』
ノートの文字は、ページを追うごとに、学のとともにびた跡へと変わっていく。 からにかけての記録には、ある確な『傾向』が、子供のによって残酷なまでに導きされていた。
『:算数まとめテスト 100点(学1位) 母:赤飯を炊く。嫌5。 父:2015分帰宅。テストを見て「よくやったな」と言う。 の会話:18ラリー。 母が父に塾の特別クラスの話をする。父は相槌を打つ。夕を緒にべた:22分。 分析:僕の点数が満点の、お父さんは途で席をたない。お母さんも声を荒げない。平。効果は持続』
『:漢字テスト 92点(学4位) 母:ため息をつく。嫌2。「次は気をつけなさい」と部に籠もる。 父:2240分帰宅。母は寝からてこない。会話ゼロ。 分析:点数ががると、お母さんは僕の部に来て勉を見張る。お父さんはく帰る理由を失う。のの空気が凍る』
ページをめくるが止まらない。
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の擦れる音が、の奥で激しく響く。
翔太は、分析していたのだ。 自分の点数が、え切った両親のをどうかすのかを。 両親がいつ目をわせ、いつ言葉を交わし、いつ同じ空に留まるのか。 歳、歳の子供が、毎晩、息を潜めてリビングの気配を伺い、ノートをいて数字を記録していた。 バラバラに引き裂かれたあの婚届を、再び現実に突きつけられないために。
だが、記録は『Ⅱ』から『Ⅲ』へとむにつれ、急速に絶望のを帯び始めていた。 学の。 翔太が学位を取り続けることが、周囲にとっても、庭にとっても『当たり』になってしまった期の記録だ。
『:公模試 偏差値71.2(県内1位) 母:「順当ね」と言っただけ。嫌3。すでに次のテキストを解くよう指示。 父:2310分帰宅。成績表をチラリと見て「そうか」と言って缶ビールを持って寝へ。 会話数:2ラリー。 分析:満点でも、位でも、もうは会話をしない。 お父さんはに寄り付かなくなった。お母さんは僕しか見ていない。 位を取ることは、もうを繋ぎ止める薬にならない。 僕が完璧でいる限り、お父さんはこのから消えていく』
文字が、乱れていた。 几帳面だった罫線の枠をはみし、圧がくなったり、掠れたりしている。 ノートの片隅に、消しゴムで何度も擦ってがくなった跡があった。
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そこには、ただ言、 『どうすればいい?』 とだけ、さくかれていた。
そして――。 最のノート『記録 Ⅲ』の、先のページ。 赤のボールペンで、太い線が引かれた付があった。
それは、旬。 翔太が珍しく酷い邪をこじらせ、をしたまま受けた塾のマンスリーテストのだった。
『:マンスリーテスト 71点(クラス落ちの危) 結果がた夜。 お母さんが泣いた。「私の管理が悪かった」「これじゃ受からない」とリビングで取り乱して泣いた。 その、お父さんが斎からっててきた。 何かぶりに、お父さんがお母さんの肩を抱いた。 「綾子、落ち着け。翔太はがあったんだ。おのせいじゃない。これからのスケジュール、俺も緒に見直すから。な?」 は夜のまで、ダイニングでずっと話しっていた。 お父さんがお母さんに温かいお茶を淹れてあげていた。 お母さんがお父さんので、音を吐いていた。 の会話ラリー数:数え切れない。 発見: が本当に話すのは、僕が成功したじゃない。 僕が失敗して、壊れそうになって、お母さんがじゃ支えきれなくなっただ』
息が詰まった。 肺の空気が、すべて搾りされるような覚だった。
ノートの次のページには、の毛もよだつような精密な『実験計画』が記されていた。
『仮説: 僕の成績が途半端に良いのが番危険。
位はもう常になって効果がない。 完全に落ちこぼれるか、異常な点数を取れば、お父さんは見捨てて逃げることができなくなる。