"何番まで落ちたら離婚するの" 第15話
雅は震えるで、へへとページをめくっていった。 『父の帰宅』 『母の嫌』 『会話のラリー数』 『僕が満点を取ると、お父さんは途で席をたない』 『満点でも、もうは会話をしない。位を取ることは、もうを繋ぎ止める薬にならない』
ペラリ、ペラリとが擦れる乾いた音だけが、息の詰まるような沈黙のに響く。 雅のが、止まった。 『記録 Ⅰ』の最初のページ。 のの記録。 『ゴミ箱のにあった。お父さんの名とお母さんの名がいてあった。「婚」のを国語辞典で引いた。夫婦がやめること。族じゃなくなること』
「あ……」 雅のから、かすれた空気の漏れるような音が漏れた。 ノートを押さえる夫の指先が、くなるほどくにい込んでいた。 ポタリ、と黒いインクのに、丸い染みが広がった。 続いて、もう滴。
「俺は……」 雅は両で顔を覆った。 ネクタイが歪み、肩が激しく波打つ。 「俺は、何てことを……何てことをさせてたんだ……」
の男が、声を押し殺してむせび泣く姿を、私は結婚してから度も見たことがなかった。 雅はいつだって、嫌という壁の向こうに隠れ、笑を浮かべて私を見ろすことで、自分の優位を保っていたはずだった。 その夫が、今、子供のノートので、体をさく丸めて嗚咽していた。
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「怖かったんだ」 指の隙から、涙とに塗れた雅の声が零れ落ちる。 「おが……おがどんどん変わっていくのが、怖かったんだよ、綾子」
雅は顔をげないまま、に向けて言葉を吐きした。 「翔太がまれて、おは本当に幸せそうだった。でも、あいつが勉ができるって分かってから……おの目が、何かに憑りつかれたみたいになっていった。『この子のため』って言いながら、おが見ていたのは翔太の成績表の数字だけだった。俺が何を言っても、『あなたには分からない』『父親の自覚がない』ってね除けられた。……のに、俺の居所なんて最初からなかったんだ」
「雅……」
「だけど、番卑怯だったのは俺だ」 雅は拳で自分の額を激しく叩いた。鈍い音がリビングに響く。 「俺はおにち向かうのが嫌で、揉めるのが面倒で、仕事に逃げた。翔太がおの圧に押し潰されそうになっているのを、本当はずっと気づいていたのに……『おの教育方針だろ』って突き放して、自分だけ綺麗な所で被害者のふりをしていたんだ!」
雅は顔をげ、涙でぐしゃぐしゃになった目で翔太を見た。 「翔太……すまない。本当に、すまない……! お父さんが、お父さんがくて、おをにして……おにこんなことまでさせて……!」
翔太は、かなかった。 ただ、泣き崩れる父親を、見かれた瞳で見つめていた。
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そのさな胸が、浅く、速く波打っている。
私は、翔太のたいをそっと両で包み込んだ。 そして、息子の目を見つめた。
「翔太。お母さんの顔を見て」 息子が、恐る恐る私に線を向けた。 私は、自分のの最も暗く、最も醜い部分を、言葉にして差しす覚悟を決めていた。
「お父さんの言う通りよ。悪かったのは、お母さんなの」 私の頬を、いものが伝っていった。 「お母さんはね、自信がなかったの。仕事を辞めて、社会から切りされて……私には何もないって、ずっと怯えていたのよ。お父さんとの会話が減っていくのも、がれていくのも分かっていたけれど、どうやって修復すればいいのか分からなかった」
翔太の瞳が、微かに揺れる。
「だからね、お母さんは、あなたの『番』を利用したの。あなたが優秀でいれば、私は『派な母親』でいられる。あなたが満点を取れば、お父さんも私を無できなくなる。……私はね、あなたをしていたんじゃない。あなたをトロフィーにして、自分の空っぽなを埋めて、お父さんを繋ぎ止めるための『首輪』にしていたのよ」
「お母さん……」
「ごめんね、翔太。苦しかったでしょう。怖かったでしょう」 私は息子のを、自分の額に押し当てた。 「位を取っても獄、点数を落としても獄。そんな所に、歳のあなたをも閉じ込めていたのは、この私よ。
あなたが悪かったことなんて、何つない。あなたが違えた問題なんて、この世につもなかったのよ……!」