"父の逝った夜の車" 第11話
ピコン、とい子音が元で鳴った。
画面をしして見ると、グループメッセージの画面に、のシステムメッセージが表示されていた。
『美咲がグループを退会しました』
姉は何も言わなかった。 反論も、りも、しみもき込まず、ただ静かにグループから消えていた。 それが、姉のした答えだった。 これ以、この問題に関わりたくない。おじさんを疑いたくない。庭を壊されたくないという、拒絶のサインだった。
『……おい、千鶴。聞こえてるか』
兄の声は、先ほどまでの号から転して、氷のようにえ切っていた。
『度とおじさんの周りを嗅ぎ回るな。そののことも、松田さんのことも、全部忘れろ。 もしこれ以おじさんを傷つけるような真似をしたら……俺は、おを妹だとわないからな』
ツーツーツー、と無質な切断音が響いた。
私はスマートフォンをからし、畳のに置いた。 腕の力が抜け、そのまま両をについてうつ伏せた。
誰も方はいなかった。 兄も、姉も、真実など望んでいなかった。 彼らにとって切なのは、にんだ父の無ではなく、今目のにある活と、自分たちを庇護してくれた「優しい恩」の姿を守ることだったのだ。
私がやっていることは、ただの恩らずの暴挙なのだろうか。 波をてず、すべてをみ込んで、おじさんに謝してきていくのが「正しい子ども」
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のあり方だったのだろうか。
――違う。
私は顔をげ、に散らばった母のを見つめた。
『子どもたちにだけは、父親が名誉なに方をしたとわせてはならない』
もし兄の言う通り、すべてが伯父の過失と善の物語で完結しているのだとしたら、母のこの言葉の説がつかない。 父は、何をしたのか。 父は、なぜななければならなかったのか。
兄が拒絶し、姉が逃げしたとしても。 歳のあの夜、ので怯えていただけの私には、る義務があるはずだ。
私はちがり、母のを丁寧に折りたたんで、トートバッグの奥くにしまい込んだ。 涙はもう、乾いていた。
元を確かめるように、しっかりと歩を踏みす。
町れの川敷にある、あの錆びた鉄骨のへ。 今度こそ、逃げずに、伯父のにたなければならない。
町れの川敷へ向かうは、平の午ということもあって、すれ違うもほとんどなかった。
温かいがのススキを揺らし、くでのい唸り声が響いている。 子どもの頃、このを自転でると、いつもの奥がツンとした。川のとの匂い、それにどこからか流れてくる械油の匂い。 あの頃は、それが町全体の匂いだとっていた。 けれど今になってえば、それは川敷のどん詰まりにある、伯父のからに乗って流れてきていたものだった。
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砂利が途切れる所に、錆びたトタン板で囲われた平の作業が見えてきた。 『澤渡属加』と青いペンキでかれた板は、に晒されて半分以が剥げ落ち、「属」の文字しか判別できない。 敷には旋盤からた鉄くずのが青いビニールシートを被せられて並び、隅にはに見たものと同じ、い緑の軽ワンボックスカーがをねげたまままっていた。
ガラガラ、とい鉄の引き戸をけると、をつんざくような周波の属音がび込んできた。
が散り、煙ががっている。 油と鉄の混ざった独特の気が顔に吹き付け、私はわず元を押さえた。
の奥、暗い裸球のに、油まみれの青い作業着を着た背があった。 両で属棒を旋盤に押し当てている。 丸まった背骨の形が作業着のから浮きるほど痩せていて、首筋にはい皺が刻まれていた。 私のっている伯父よりも、さらに回りさく見えた。
械の回転が止まり、キーンという余韻が静けさに溶けていく。 伯父は袋をし、腰のタオルで額の汗を拭った。その拍子に、激しい咳き込みが彼を襲った。 ゲホッ、ゲホッ、と胸の奥から絞りすような乾いた咳。伯父は械のフレームにを突いて、しばらく肩をさせていた。
「……おじさん」