"父の逝った夜の車" 第19話
シーツのに置かれた伯父のに、そっと自分のをねた。 たくて、甲の皮膚はのようにく、の血管が浮きていた。 爪のの械油は、病院の消毒液で洗われても、やはり完全には落ちていなかった。
このだった。 昨、居酒で私の子を引いてくれた。 子どもの頃、を撫でようとして、私がを引いて拒絶した。
「……おじさん」
さく呼びかけると、伯父のまぶたがピクリといた。 乾いた唇がかすかにき、喉の奥で掠れた呼吸が漏れた。 ゆっくりと持ちがったまぶたの奥から、濁った、けれど確かに識の宿った瞳が私を捉えた。
「……ち……づる、ちゃん……」
声にならぬような、空気の擦れる音だった。 伯父は酸素マスクの奥で、眉を苦しそうに寄せ、それから申し訳なさそうに線を泳がせようとした。 昨の夕方、のに座したの記憶が、蘇ったのだろう。 自分がまた、私を傷つけてしまったのだとい込んでいる目だった。
私は、もう方ので、ポケットからあの枚のを取りした。 黄く変した、県央病院の診断。 それを、伯父の胸元のシーツのに、静かに広げた。
伯父の線が、そのに落ちた。 その瞬、図のモニターの波形が、目に見えて乱れた。
「……あ……」
伯父の喉から、苦悶の唸り声が漏れた。 々しい指先が、シーツを掻きむしるようにく。
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「おじさん。責めに来たんじゃないの」
私は伯父のたいを、両でしっかりと包み込んだ。逃げられないようにではなく、体温を分かちうように、力を込めた。
「全部、教えて。お願いだから……隠さないで。お父さんは、あの夜……自分でをらせたんでしょう?」
伯父の目から、粒の涙が溢れした。 涙は髪の混じったこめかみを伝い、枕のいカバーに染みを作っていく。 伯父は首を横に振ろうとしたが、酸素マスクので、掠れた声が途切れ途切れに零れ落ちた。
「……話すな……って……義姉さんに……正彦兄さんに……約束、したんだ……」
「お母さんはもういないの。お父さんもいない。残された私たちが……真実もらずに、おじさんをでなせるわけにいかないでしょう?」
私の目からも、涙がこぼれた。 伯父の節くれだった指を握るに、さらに力を込める。
「お父さんは、なぜあのに乗ったの? どうしておじさんののブレーキが壊れていることをっていて、あの峠へったの?」
伯父は井を見げた。 い井の模様を見つめながら、途切れ途切れに、の封印を解くように、言葉を紡ぎ始めた。
「……正彦兄さんは……最初から……ぬ所を、探していたんだ」
図の子音が、静かな病にく響いた。
「あのの初……正彦兄さんは、仕事に突然識を失って倒れた。運送会社には内緒で、でこの病院に来て……検査を受けたんだ。
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結果は、の施しようのない悪性脳腫瘍だった」
伯父の胸が、激しく波打った。
「術をしても助かる見込みはほとんどない。それどころか、何百万円もの医療費がかかり、最は寝たきりになって族を巻き添えにする……正彦兄さんは、そう医師から告げられた。病院からてきた兄さんは、真っ先に俺のに来たんだ。普段は滅に酒なんてまないなのに、缶ビールを本買ってきてな……作業の隅で、でんだ」
そのの景が、伯父の掠れた言葉を通して鮮に浮かびがってくるようだった。
「兄さんは……淡々と、自分の余命を俺に話した。『あと半ももたないらしい』って。俺は取り乱して、声で泣いた。『セカンドオピニオンを受けよう、俺がを面するから京の学病院へこう』ってすがったよ。でも、兄さんは首を横に振った。『孝司、うちにはがない。俺がに延命治療なんて受けたら、節子も、健も、美咲も、千鶴も、に迷う。あいつらに借と貧困だけを残してぬわけにはいかないんだ』って……」
「お父さん……」
「正彦兄さんは言ったんだ。『どうせぬなら、あいつらに何かを残してにたい。俺の命を、に換えられないだろうか』って……俺は鳴ったよ。馬鹿なことを言うな、そんなこと義姉さんがぶわけがないって。でも兄さんの目は、真剣だった。
あのは……父親として、自分のに所を探していたんだ」