"井戸の謎と、睡眠薬入りの水" 第3話
の片隅にあったしこりは消えたはずだった。それなのにこのヶで族について振り返るで、私は自分自がある事実から目を背けてきたことに気がついてしまったのだ。
それはまさしく勇気のこと。あの子は幼い頃からし困ったところのある子だった。落ち着きがなく、いったら先を考えない。悪気はなく周囲を振り回し、いやりにかける。
まあ私は湯のでさくため息をつき、曖昧に笑うにとめた。湯の向こうで別の話題に移る湯治仲に相槌を打ちながら、自然と記憶が巻き戻り始める。
あれは勇気がまだ学学だった頃のことだ。休みも終わりがづき、彼はリビングのテーブルいっぱいに画用や空箱、用ボンドを広げて作の宿題に取り組んでいた。どうやら族でった族館の景を画用で体に表現したいらしい。彼の元には魚の形に切った画用が散らばっていた。
最初こそ順調だとったが、作業の難易度ががっていき、勇気は先がうようにかなくなっていく。切ったは歪み、張りわせた部品はすぐにれてしまう。次第に数も減り、眉にも力がこもっていく。すると見かねたけ太郎がそっと横から声をかけた。
「ここ、押さえやろうか」
最初はあくまで助けのつもりだったのだろう。
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ところが次第にが入り、設計図をき直し、度だのバランスだのと言い始め、け太郎は徐々に真剣な顔になっていった。
「あら、随分本格じゃない?」
洗濯物を干して戻ってきた私はわず声をげる。先ほどまではなかった派な建造物がテーブルので形になってきていた。
「お父さん、すごいだね」 「何言ってる? この鱗のを見ろ。勇気が塗ったんだろう? こんなの才が描いてもせないだ」
自分の器用さに目を輝かせる息子に対し、け太郎の差しも優しい。あれだけ真剣に設計図だ度だと緻密に計算していたくせに、きちんと褒めて、あくまで勇気の作品なのだという姿勢を崩さなかった。
「おお、ここの糊付けは勇気だな。丁寧な仕事をしますね」 「へへっ」 「そうだろう」
楽しそうなに釣られて、つい私もとをす。
「ねえ、この作にお母さんも非参加させてよ。しでいいから」 「じゃあお母さんはイカを作ってよ」 「え? イカ? 細かそうね」
言いながら画用を切るが全くうまくできない。へにゃっと頼りないイカが来がり、で顔を見わせて笑った。お母さんが番だ。昔から器用なのよ。でも待って、あの族館、イカなんていたかしら。私の問いにけ太郎がふっと吹きす。
幸せとはこのことだとえるほどやかな族の幕だった。
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しかしその翌である。さな事件が起きた。朝をべ終えた勇気が、実はまだのつけられていない宿題がもうつあると言いしたのだ。
「え、作で終わりじゃなかったの?」
私が聞き返すと、勇気は線を泳がせながらもごもごとをかした。
「調べるやつもあった」 「調べるって何を?」 「昔のの暮らしについて。にあるものとか使い方とか」
休みの終盤あるあるだ。直になって忘れていた課題が芋づる式にてくる。それならおじいちゃんとおばあちゃんに聞いてきなさい。昔の具が残ってるかは分からないけど、お話は聞けるからね。世帯宅で暮らしているのだ。祖父母の活の恵を聞くにはこれ以ない環境だった。
「うん、分かった」
るく返事をすると、勇気は勢いよく子を引いてリビングをびしていく。ほっと胸を撫でろしつつ、私は洗い物を始めた。
しばらく事に没する。昨するつもりでできなかったけ太郎のシャツのアイロン掛けをし、いつついたのかコーヒーのシミを見つけてそれを丁寧に拭き取っていく。シミが綺麗になった達成が消えないうちに掃除をかけ、次に洗濯物を干そうとにただった。
「すぐ乾くのは分かるけど、この暑さは体にこたえるわね」
同じく洗濯物を抱えた義母とくわす。
「ええ、本当にそうだわ。お母さん、勇気がすみません。今になってまだ宿題が残ってたって言いして」