みかん小説
本棚

"井戸の謎と、睡眠薬入りの水" 第4話

「ん? ゆきちゃんがどうかしたの?」 「え? そっちにってませんか? 昔のの暮らしについて調べるって宿題で」

議そうに首をかしげる義母を見て、嫌な予がした。まさか宿題を放りし、私にき先も告げず勝にどこかへ遊びにかけたのだろうか。やだ、もしかしてあの子……。

そうつぶくと同である。

「こら、何をしとる!」

義父の鋭い声がからってきた。見ると階の窓から義父がを乗りすようにして叫んでいる。

「勇気、そこかられんか!」

その言葉に私の臓ががった。まさか……!

洗濯物を放りし、私は庭を横切ってす。義母も状況を察したのか、顔を変えてに続いた。ゆきが見えなくなっている庭の番奥。物干し竿を置いているスペースからは、植込みに遮られて見えない所。そこに勇気はいた。

「何してるの?」

柵の内側にいるが子に私は叫ぶ。そうしてかき寄り勇気の体を掴んでく引っ張った。反でどさっと尻持ちをついてしまう。腰に鈍い痛みがった。

「ちょっと覗いてただけだよ」

腕のから聞こえる言い訳の声に、内では堵する。よかった、怪はないようだ。ふうといため息をつき、そして私は顔をげた。

目のにあるのは、く使われていない古い井戸だ。子供がづかないよう、周囲には柵を設け、蓋もしていた。

広告

勇気には物つくからあそこには絶対づかないことときつく言い聞かせてきた。だからこそ私はまさか井戸へくとはにもっていなかった。

それなのに今、彼は柵を超えて蓋をずらし、を乗りして井戸のを覗いていたのだ。つい先ほど目の当たりにしたばかりの景をし、鳥肌がった。義父が気づいてくれていなければとうと、恐ろしくて仕方がない。

「ここにはづいちゃだめて、何度も言ったでしょ」 「だって、だって……」

勇気は唇を尖らせ、顔を背けた。

「昔のの暮らしを調べる宿題なんだよ。井戸は昔のが使ってたものでしょ」 「だからって危ないことをしていいわけないでしょう。好奇で済む話じゃない。落ちたらどうする? 怪じゃ済まんぞ」

義父の叱責がからってくる。体勢をえ、勇気の顔を覗き込んだ。しかしその表に反省のはない。むしろ、何が悪いのか分からないとでも言いたげに義父を睨みつけている。

「ほら、おじいちゃんとおばあちゃんに謝りなさい。『驚かせてごめんなさい』って」

そう促すが、彼は私のを振り払うとってへ戻ってしまった。

そのの夕方、仕事から帰ったけ太郎に私は部始終を話した。

「お願い、あなたからもちゃんと叱って」

け太郎は黙って頷き、勇気のに腰をろす。

広告

その表は普段のやかなものとは違った。

「勇気」

く、しかしはっきりとした声だ。勇気がそうに顔をげる。

「あそこがどれだけ危ない所か、お父さんもお母さんも昔から何度も言ってきただろう」 「でも宿題だよ。僕が先られてもいいの?」 「今はそんな話をしてるんじゃない。いいか、お父さんもお母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも勇気が切なんだ。誰もおが憎くてってるんじゃないんだぞ」

声はかったが、その目はに満ちていた。きっと勇気も分かってくれたはずだ。そうったである。

「じゃあ直せばいいのに」

相応にびた、めた声だった。

「埋めればいいじゃないか。そうやって僕のためだとか言って、結局僕を悪者にしてるんだ」

ガタンと子からりると、勇気はリビングのドアをける。体を廊に半分してから振り返り、こう言い放った。

「井戸に僕をづかせないのは何か理由があるんだろ? どうせだけで何かいいものを隠してるんだよ」 「ちょ、勇気!」

階へと駆けがる軽い音が響く。しかし、私もけ太郎も呆然としたままそこからけなかった。どうすれば伝わるのか。正しい答えをとも持ちわせていなかった。

やがて休みが終わり、学期が始まった。井戸の件はきちんと考えねばならない。

ある勇気の言う通りなのだ。使っていないならば全の面からも埋め戻してしまった方がいい。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: