"確率99.97%の父子鑑定" 第2話
宗介は玄関まで見送ったが、みさきは度たりとも振り返らなかった。その、かすかにすれ違ったみさきの横顔——それは、みやりではなく、すべての運命をすでに決したの、あまりにも静かな表だった。
今になって、その表のが痛いほど理解できた。お腹のなかに宿ったさな命を守り抜くという、凄まじいまでの覚悟の表だったのだ。 宗介は両で顔を覆い、荒い息を吐きした。 「……みさきさんの現の居所と活、そして子供について、すべて調べてくれ。ただし……みさきさんに絶対に気づかれないように」 田はくをげ、い声で答えた。 「……承いたしました」
それから2。田健は分い調査報告を抱えて、再び朝の会を訪れた。 宗介は報告を1枚1枚、指先を震わせながらめくっていった。 「みさきさんは、婚直、京の婦科で子供をみ、すぐに庭裁判所に改名を申請して『伊藤』と苗字を変えていました。子供の届には父親の欄はありません。父親を詳として処理したため、子供の姓も母親のしい姓に従って『伊藤』となりました。その、静岡県の伊へ移り、駅くのさな堂で厨補助として働きながら、息子と2きりで暮らしています」
宗介は報告の付を、震える指でなぞった。
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改名の期は、婚が成してからわずか2ヶ。逆算すれば、答えはつしかなかった。みさきは婚する点ですでに子供を籠っており、をたに産と改名を順にめ、島とのすべての繋がりを、自らので完全に断ち切ったのだ。
宗介は報告を机に置き、窓ののどんよりとした空を見つめた。喉の奥が乾き切っていた。
同じ頃、静岡県伊の古びたさな堂では、みさきが昼の営業を終え、油の匂いが染みついたエプロンをしていた。 「お母さん、今のお迎え、ボクね!」 くの保育園にハルトを迎えにくと、3歳の息子はみさきのをしっかりとさな両で握り、弾むような取りで歩きながら尋ねた。 「お母さん、今の夜ご飯、なに?」 「お噌汁よ」 みさきはく答え、ハルトの柔らかい髪を優しく撫でた。
みさきが暮らしているのは、駅からしれた、堂から歩いて10分のところにある古い集宅の1階の部だった。決して広くはないアパートのだが、ハルトの描いた絵やおもちゃが、いつもきちんと頓されていた。みさきは夜がけるに起き、保育園のお弁当を作り、夜はハルトを寝かしつけたあとで翌のおかずのごしらえをするという活を、この3、休むことなく繰り返していた。
みさきにとって、このでの唯の支えとなってくれたのは、堂の女将である鈴富子だった。
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富子は60歳を過ぎ、夫と別したに1でこの堂を切り盛りしてきた気丈な女性だ。3、まれたばかりの赤ん坊を抱いて仕事を探していると訪ねてきたみさきの事を、富子は詮索することなく察し、言も問わずに厨補助の仕事を与えてくれた。みさきが遅くまで働くには、ハルトを自分のに連れていき、ご飯をべさせ、寝かしつけてくれたのだ。この町で、みさきとハルトが静かに根をろすことができたのは、富子の温かい支えがあったからこそだった。
ハルトは同代の子よりも言葉がしく、の表を敏に読み取る利発な子どもだった。保育園での子どもたちが父親の話をし始めると、ハルトは何も言わずにそっと別の遊びに移するのである。みさきはそれをっていた。ハルトがすでに父親のを肌でじ取っていることを。しかし、どう説すればいいのか適切な言葉が見つからないまま、その質問が投げかけられるを、、またと先延ばしにしていたのだった。
京では、宗介が報告を受け取った、会に閉じこもって丸を過ごしていた。3、度もみさきの方を探そうとしなかった自分。仕事だけに没し、元妻のを自分の世界から完全に消しっていた自分への激しい嫌悪が、胸を締めつけた。
宗介はデスクの引きしの奥から、1枚の古い写真をそっと取りした。