"50億を消した傲慢行員の末路" 第3話
方その頃、若葉町支の融資課フロアでは、いつものように静かな業務が続いていた。 「いやあ、今の午は変な客がくて疲れましたよ」
窓業務が段落した昼休み、鈴は休憩でコーヒーをマグカップに注ぎながら、同僚の員たちに愚痴をこぼしていた。 「さっきもね、汚い作業を着たおじいちゃんが来てさ、古い通帳をほどしてきて『面倒な続きをしろ』って言うんですよ」
「あら、たしかに、あのおじいさん……」 隣に座っていた堅の女性員が苦笑いしながら相槌を打つ。 「しかも、職業欄に『会社役員』なんていてあってさ。どう見ても町の零細のじいさんなのに……しまいにゃ待席で『社員が15万いる』とか話でボラ吹いてるんですよ。もうあきれちゃって」
「15万? それはさすがに嘘がきすぎない?」 「だから僕、ガツンと言ってやったんです。『嘘つきの貧乏は来るな、全部解約して2度と来るな』ってね」
鈴が自げに胸を張ると、女性員はし配そうな顔をした。 「えっ、それまずくない? 支にられない?」 「丈夫ですよ。あんなボケたじいさん、どうせした額なんて預けてないし。それに田は、面倒なトラブルさえ起きなければ何も言いませんから」
鈴はで笑った。彼にとって、自分より学歴がくなりの貧しいは、見して当然のだった。
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名学を卒業し、このメガバンクに入した自分こそが優秀であり、社会の選ばれたエリートなのだという烈な自負があった。
「ま、これで厄介払いができましたよ。僕のは貴ですからね。あんな底辺の相をしてる暇はないんです」
彼がそう言ってコーヒーをみ干した、まさにそのだった。 支の奥にある融資課のフロアから、突然きな声が響きわたった。
「なんだこれは……!? どういうことだ……!」
それは、普段は温で事なかれ主義を貫いているはずの田支の声だった。 休憩にいた鈴たちも、そのただならぬ穏な雰囲気に顔を見わせる。 「なんか揉めてる……?」 「ちょっと、ってみようか」
鈴たちが恐る恐るフロアに戻ると、そこには血相を変えた田支が、パソコンのモニター画面をにしてち尽くしていた。 「支、どうされたんですか?」 副支が駆け寄るが、田は画面に釘付けになったまま、刻みに震えている。
「き、消えた……」 「はい? 何が消えたんですか?」 「資だ……! うちの支の預残が、50億円も気に引きされている……!」
その言葉に、フロアの空気が瞬で凍りついた。 「50億……!? そんなバカな、システムのバグなんじゃないですか!?」 員たちが々に叫ぶ、田は震えるでキーボードを叩き、取引履歴を確認した。
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「バグじゃない……! 実されている……央第への、莫な資移だ……! 待て、この座名は……!」
田の顔から、瞬にして血の気が引いた。 「た、田グループ……!」
田のから漏れたその名目に、鈴は首をかしげた。どこかで聞いたことがあるような、ないような。しかし、田の反応は尋常ではなかった。彼は子から崩れ落ちるようにへたり込み、両で自分のを抱えた。
「終わった……うちはもう、終わったんだ……」 「支、しっかりしてください! 田グループって……あの世界な企業の……?」
副支が肩を揺さぶるが、田はごとのように繰り返すだけだった。 「どうしてだ……! 田グループの座は、昔からうちの支の最の命線だったんだぞ……! それがなぜ……突然、全額解約なんて……!」
その言葉を聞いた瞬、鈴の背にたい汗が気に伝った。
――「全部解約して、2度と来ないでくれ」 ――「わかりました。あなたの言う通り、すべて解約させていただきます」
先ほど、あの汚い老と交わしたやり取りが、鈴の脳裏に激しいフラッシュバックとして蘇る。あの老がしてきたのような古い通帳。まさか――。
鈴のがガクガクと震え始めた。 「あ、あの……支、その田グループの代表者って、もしかして……」 鈴が震える声で尋ねると、田は血った目で彼を睨みつけた。
「代表取締役会、田誠だ……! 50からうちの支に、個と法の両方で巨額の資を預けてくださっていた、1番の顧客だよ……!」