"50億を消した傲慢行員の末路" 第11話
どうして、どうしてあんたみたいなエリートが懲戒解雇なんてされるのよ!」
り子は錯乱したように叫びながら、クッションを鈴に投げつけた。 「あんたを流の学に入れて、流のに入れるためにお母さんがどれほど苦労したとってるの! おに……どれほど自の息子だったか……! それが無職……冗談じゃないわよ! 私の顔にを塗る気……!」
母親のからるのは、息子のを案じる言葉ではない。ただひたすら自分の世体が傷つけられたことに対する、りだけだった。
「うるさいな! 俺だってこんなはずじゃなかったんだよ!」 鈴はを抱えながら叫び返した。 「あの汚いじいさんが、まさか企業の会だなんて分かるわけないだろう! 俺は悪くない、運が悪かっただけだ! 体、母さんが『貧乏とは関わるな』って育てたんだろうが!」
「親に向かって答えするんじゃないわよ! 、その会のところに座しにきなさい! 絶対にお願いして首を撤回してもらうのよ! そうしないと私、恥ずかしくても歩けないわよ!」
親子の見にくい責任のなすり付けいが続く、リビングのテーブルに放りされていた鈴のスマートフォンが、けたたましい着信音を鳴らし始めた。 画面に表示されたのは「事部」の文字だった。 鈴の臓が恐怖でねがった。
広告
つい先ほど、自分に無期限の自宅謹慎と実質の懲戒解雇を言い渡した、あの酷な事部だ。
「で、話だ……からだ……」 鈴が震える声で言うと、り子は目を輝かせた。 「ほら! きっと違いだったのよ! くなさい、『から復帰してくれ』って言われるに決まってるわ!」
鈴は恐る恐る通話ボタンを押してに当てた。 「もしもし……鈴です」 「鈴かっ!」
話越しに鼓膜を破らんばかりの、狂気に満ちた母親の切り声――ではなく、事部の号が響いた。鈴はわずスマホをからした。 「お、3の案件で体何をやらかした……!」 「えっ、3……?」
その言葉を聞いた瞬、鈴の背筋にを浴びせられたような悪寒がった。 投資信託、齢の老夫婦、2000万円。そして当の支と緒に類を改ざした、あの暗い記憶。
「たった今、警庁の本庁から当社のコンプライアンス部に直接連絡が入ったんだ! おが3、渡辺という齢の顧客に対し詐欺同然ので融商品を売り付け、さらに私文を偽造したという具体な垂れ込みと完全な証拠データが、警察に持ち込まれたとな……!」
「なっ……」 鈴の顔から瞬にしてすべての血の気が引いた。なぜ、完璧に隠蔽したはずの過が今になって警察に――。
「言い持ち込んだのは、田グループの最の顧問弁護士だ! 田会は単なる座解約で終わらせるつもりはなかったんだ! おというの過の悪事をすべて洗いげ、当を社会に完全に抹殺しに来たんだよ!」
広告
「ああ……あああ……」 鈴の喉から声にならないうめき声が漏れた。 自分が犯した「客を見す」という罪が、パンドラの箱をけてしまったのだ。会のりは自分だけでなく、の過のすらもすべて焼き尽くそうとしている。
「鈴、いいか! 警察はすでに詐欺事件として件に向けていている! としてはおを切庇うつもりはない! すべての責任はおと当の支にあると警察に報告する! おはもうただの懲戒解雇じゃ済まないぞ、逮捕される覚悟をしておけ!」
無質な子音が響き、話は切れた。
「健太、ねえ、何て言われたの? から復帰できるのよね……?」 状況が理解できず、縋るような声で問いかけてくる母親の顔。鈴は絶望の淵から見つめ返した。
そのだった。ピンポーーーン……。 静かなマンションの部に、玄関のインターホンがたく鳴り響いた。
「あら、誰かしら、こんなに……」 り子は脳気にちがり、モニターの画面を覗き込んだ。そして議そうに首をかしげた。 「健太、スーツを着た男のが3ってるわ……なんか、警察帳みたいなのを見せてるんだけど、あんた、何か落とし物でもしたの?」
その言葉を聞いた瞬、鈴の界は完全に真っ暗になった。 逃げなど、どこにもない。