"母は死んだと書いた娘" 第4話
その仕が、酷く々しく見えた。 「おが葵のために尽くしてくれたことは、俺が番よくってるよ。謝してるさ。だから、そんな子供のいた類枚に目くじらをてるな。俺からあいつに、でよく言っておくから」
「康平さん」
「なんだよ」
「あなた、何か隠してない?」
康平の喉仏が、ごくりとした。 「は? 何を隠すって言うんだよ。言いがかりはやめてくれよ、疲れて帰ってきてるんだ」 康平は苛ちを隠すように背を向け、廊へと向かった。 「先に呂入ってくる。夕飯、温めといてくれ」
バタン、と脱所のドアが乱暴に閉められた。
残されたリビングで、私は、ち尽くした。 康平の態度はおかしかった。 娘が学で継母のを抹消したというのに、父親としての驚きがすぎる。まるで、最初からそうなることを予していたかのような、自然な逃げ腰の態度だった。
(ので、何があったの?)
葵の頑なな拒絶。 康平の自然な揺と誤魔化し。
胸騒ぎが、ざわざわと音をてて広がる。 私は引き寄せられるように、廊の突き当たりにある康平の斎へとを向けた。
普段、私はこの部に滅に入らない。掃除をするも、康平の私物には触れないのが暗黙のルールだった。共働きではないが、計の管理やな類はすべて康平が握っており、「おは々の活のことだけ考えていればいい」
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と言われてきた。それを夫の優しさだと、これまでは信じて疑わなかった。
暗い斎のかりをつける。 本棚には仕事関係の専と、ゴルフの雑誌が然と並んでいる。デスクのにはパソコンとペンて。 私はデスクのにある、段のキャビネットに目を留めた。 番のい引きし。普段は鍵がかけられているはずのその所に、さな鍵が挿しっぱなしになっていた。康平が呂に入るに、何かを取りしてそのままにしたのだろう。
臓の鼓がの奥で鐘を打つ。 「の引きしを勝にけるなんて」という理性の声と、「らなければならない」という本能が激しく衝突した。 けれど、今学で受けた屈辱と痛みが、私の背をく押した。
カチャリ、と引きしを引いた。
には、過の確定申告の控えや、命保険の証券ファイルが無造作に入っていた。 そのを探る。指先が、見慣れないの茶封筒に触れた。 役所の名が入った、角サイズの封筒。
私は震えるで封筒を引きし、を取りした。
番にあったのは、緑の枠線で印刷された公な届用だった。 表題の文字が、私の目にび込んでくる。
『養子縁組届』
息が止まった。 類には、すでに黒いインクで必事項が几帳面に記入されていた。
養親となる者―― 氏名:浅井朋代 :昭
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養子となる者―― 氏名:浅井葵
届欄には、すでに康平の署名と認印がくっきりと押されていた。 さらに封筒のには、葵の現の戸籍謄本と、私の民票の写しまで同封されていた。付は、先週の曜。葵が調査票を提する、わずかの付だった。
(養子縁組……?)
ののパズルが、凄まじい音をてて組み変わっていく。 私と康平が結婚した、葵の入籍続きは「連れ子の入籍」として処理されただけで、私と葵ので法な養子縁組(普通養子縁組)は結んでいなかった。 「葵がもっときくなって、本が望んだら続きしよう」 、康平はそう言っていたはずだった。私もそれに同した。無理に戸籍の親子関係を結ぶことよりも、々の暮らしのでしずつ族になっていくことの方が切だとっていたからだ。
それなのに、なぜ今? なぜ私のらないところで、私の名がかれた類が用されているのか。
その、封筒の底から枚のメモ用がハラリと落ちた。 康平の乱雑な字でかれた、やることリストのようなメモだった。
『・来週曜までに朋代の署名・実印をもらうこと ・推薦入試の願提()までに続き完必須 ・葵には事報告で納得させる(これ以騒がせるな)』
――葵には事報告で納得させる。
――これ以騒がせるな。