"義母の合鍵が入らない" 第19話
から取りしたものを、テーブルのに、つひとつ静かに並べ始めました。
コトン、と乾いた音が響きました。
それは、私が見たこともない、古い桐の箱でした。 箱の蓋がけられ、からてきたのは――。
健が独代から使っていた古い方の預通帳。 彼の実印と、印鑑証カード。 帳。 そして、彼がまれたからの母子帳でした。
「……これ、何?」
私が眉をひそめて尋ねると、健は掠れた、けれど芯の通った声で答えました。
「病院をた……母さんのアパートに寄ってきた」
「お義母さんの?」
「うん。母さんの鍵は、俺が昔から持ってたから……アパートに入って、母さんが『あんたの将来のために預かっておく』って言って、以庫にしまい込んでいた俺の類を……全部、回収してきた」
健の指先が、桐の箱に触れました。
「母さんは……病気じゃなかったよ」
健は自嘲気に、力なく唇を歪めました。
「ただの胃もたれと、過呼吸だった。病ので聞いてたんだ。母さんが、親戚ので笑いながら言ってたよ。『男なんて母親のところに戻ってくる』『倒れたふりをすれば、嫁が泣き寝入りして鍵を返す』って」
健の目から、粒の涙がぽろぽろと零れ落ちました。 彼はそれを拭おうともせず、ただテーブルのの類を見つめていました。
「俺は……馬鹿だったよ、由。
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本当に、救いようのない馬鹿者だった。母さんがだとってた。母さんを傷つけちゃいけないとってた。でも……母さんが傷つけていたのは、俺たちの活だった。そして、俺が番傷つけていたのは……おだったんだ」
健は膝から崩れ落ちるように、フローリングのに両膝をつきました。 座ではありませんでした。 ただ、自分の犯してきた罪のさに耐えかねて、体が折れ曲がったような姿でした。
「親戚のグループチャットは退会した。病院代は払ってきたけど、母さんの病には入らなかった。母さんのアパートに、このメモを残してきたよ」
健はポケットから、くしゃくしゃになった切れを取りしました。 そこには、震える文字で、こうかれていました。
『これ以、俺たちの活に干渉しないでください。鍵は度と渡しません。次に同じような騒ぎを起こしたら、警察と弁護士に相談します』
「由」
健はにをついたまま、涙で濡れた顔をげました。 その瞳は赤く充血していましたが、昨までのあの濁った、責任を逃れようとするは、完全に消えっていました。
「俺は……急にくて頼もしい夫にはなれないかもしれない。染み付いたさは、すぐには消えないかもしれない」
健の声が、喉の奥で詰まりました。
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「でも……母さんとのに境界線を引くって、今決めた。もうおを盾にはしない。おにの代を払わせない。……もし、それでも許せないなら、てってもいい。この部をてくおを止める権利なんて、今の俺にはないから」
健はくを垂れました。 フローリングのたいに、彼の涙がポタポタと丸いシミを作っていきました。
「でも……もし、もう度だけチャンスをくれるなら……俺が、自分のでドアを閉められるようになるのを……そばで、見ていてくれないか」
静まり返った部のに、健の掠れた息遣いだけが響いていました。
私は、ソファからゆっくりとちがりました。 テーブルに並べられた、古い通帳や母子帳を見つめました。 それは、彼が繋がれ続けていた、目に見えない「臍の緒」の実物でした。 彼が自分の志で母親のに踏み込み、それをもぎ取ってきたという事実は、彼にとって骨を断つほどの激痛を伴う決断だったはずです。
私は、に崩れ落ちている健のに歩み寄りました。 けれど、彼を抱きしめることはしませんでした。 甘やかすような優しい言葉をかけることもしませんでした。
私はただ、キッチンのカウンターからたいの入ったグラスを持ってきて、彼の横のローテーブルに静かに置きました。
「って、健さん」
私の声を聞いて、健はおずおずと顔をげました。
「をんで。……話は、それからよ」
健は震える両でグラスを持ちげ、気にをみ干しました。