"ゴミ箱の隣に座る学年一位" 第1話
「さん、ちゃんのこと……何か先から聞いてる?」
スーパーの駐輪で、同じクラスのさんの母親に呼び止められた、私は買い物カゴを自転のカゴに乗せようとしていたところでした。 し汗ばむような、の湿ったが吹いていました。
「え? のことですか? 何も聞いていませんけれど」
私は平静を装って笑みを返しました。 娘のは、県桜ヶ丘の。 入学以来、定期テストでは学位の座を度も譲ったことがなく、のから当然のように学級委員を務めていました。 模試の判定は常にA。担任の先からも「このままいけば国の推薦は確実です」と太鼓判を押されている、私の自の娘でした。
私にとって、はそのものでした。 くに夫をくし、パートの事務仕事を掛け持ちしながら、の学費と塾の費用だけは円も惜しまずに面してきました。 もまた、私の期待を裏切ったことはありませんでした。 「お母さん、今度の英語も百点だったよ」と、控えめに、でも誇らしげに答案用を差しすの笑顔を見ることだけが、私の毎の支えでした。
そんな娘に、何かあるはずがありません。 それなのに、さんの母親はひどく言いにくそうに線を泳がせ、声を段く落としました。
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「あ、そうなの……。いやね、うちの娘が昨の夜、ぽろっと言ってたのよ。学期が始まってすぐの席替えで、ちゃん、番ろのゴミ箱の隣に移させられたって。それに、委員も別の男の子に代わったって聞いて……」 「……え?」 「うちの子も詳しくはらないみたいなんだけど、ほら、ちゃんっていつも番の真んだったじゃない? それなのに急にそんな端っこに追いやられるなんて、もしかして何か、先の嫌を損ねるようなことでもしちゃったのかなって、ちょっと配で」
さんの母親の目は、配しているふりをしながらも、微かな好奇と探るようなを宿していました。 いつも学トップに君臨している優等の転落を、ほんのし期待しているような、あの特の線。
私の指先が、たく張りました。 「いいえ、そんなこと。何かの違いじゃないかしら。今夜、に聞いてみますわ」
私はそうく告げると、逃げるようにペダルを漕ぎしました。 臓が嫌なリズムで鐘を打っていました。
番ろの、ゴミ箱の隣? 委員を解任された? そんな馬鹿なことがあるはずがない。
あの席は、授業に集できない問題児や、背がくて黒板を遮ってしまう徒が座る所です。 教卓の目の、黒板のチョークのが届く特等席こそが、の指定席でした。
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学の頃からずっとそうだった。は常にの線のにいて、期待に応え続けてきた子です。
に帰り着くなり、私はリビングの壁に貼られたの模試の成績表を見げました。 「全国偏差値71.4」の数字が、夕方の暗い部ので鮮やかに浮かびがっていました。
夕方半、玄関の引き戸が静かにく音がしました。
「ただいま」
いつもの、落ち着いたの声でした。 ローファーをきちんと揃え、濡れた折りたたみ傘を玄関のフックにかける、規則正しい作の音。
「おかえり、」
私はエプロンでを拭きながら、努めてるい声で迎えました。 制のブレザーのボタンをまできっちりと留めたが、リビングに入ってきます。その表には、何つが差しているようには見えませんでした。
「洗いとうがい、してくるね」 「、ちょっと待って」
洗面所に向かおうとする娘の背に、私は声をかけました。 がを止め、静かに振り返ります。った眉が、かすかにがりました。
「何? お母さん」 「……今、さんのお母さんから聞いたのよ。席替えがあったんですって?」
その言をにした瞬、の瞳の奥が瞬だけ揺れたのを、私は見逃しませんでした。 しかし、娘はすぐに線をに落とし、穏やかなトーンで答えました。
「うん。学期だからね。
クラス全員でくじ引きをしたの」 「くじ引き? でも、あなた、番ろの端っこになったって聞いたわよ。ゴミ箱のすぐ隣なんでしょう? それに、学級委員も辞めさせられたって……」