"ゴミ箱の隣に座る学年一位" 第14話
『誰の顔も見なくていいの』
違う。違う。 はそんない子じゃない。 私が塩にかけて、誰よりもく、誰よりも誇りく育ててきた子だ。 あの子がろの席を望むはずがない。逃げを欲しがるはずがない。 全部、あの佐伯という徒のさに引きずり込まれているだけだ。
に戻ると、私は狂ったように階段を駆けがり、寝のクローゼットの奥から、きな黒い革張りのファイルと箱を引っ張りしました。
リビングのテーブルのに、それらをぶちまけました。
学のの、初めての百点のテスト用。 県美術館に展示された絵画コンクールの賞の賞状。 学のの、学位の通表の束。 徒会の任命状。 に入学したの、入代表宣誓の原稿。 そして、全国模試の「志望判定A」が並ぶ、輝かしい成績表の数々。
私はそれらを、テーブルのに枚ずつ、隙なく並べていきました。 私のののすべて。 夫をくし、孤独と貧しさに耐えながら、世を見返すために築きげてきた、完璧なの破片たち。
午半、玄関のドアが静かにきました。
「……ただいま」
濡れた傘を置く、いつものの音。 リビングの引き戸がき、が入ってきた瞬、私はちがりました。
は、テーブルのに面に敷き詰められた賞状やテスト用を見て、ピタリとを止めました。
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その瞳に、微かな、しかし決定な失望のが浮かんだのを、私は見逃しませんでした。
「……お母さん、これ、何?」
「、見なさい」
私は震える指で、テーブルのの栄のを指差しました。
「これがあなたよ。これが、というの歩んできたなの。あなたはね、番で、誰よりもい所につためにまれてきたの。こんなところでち止まって、の同なんかにを取られていいじゃないの!」
は何も言わず、濡れたブレザーの裾を握りしめたままち尽くしていました。
私はバッグから、今朝の指導から持ち帰ってきた、枚の真しい類を叩きつけました。
『難関国学 学推薦型選抜 内願事同』
「ここにサインしなさい」
私はボールペンを握らせようと、のを引に引っ張りました。
「曜の朝、あの佐伯という徒の机は撤されます。学とも話をつけてきました。教先も約束してくれたわ。あの席はなくなるの。あなたは元の最列に戻って、この推薦を受けて、京の国へくの。それが、あなたのむべきよ!」
「お母さん……」
の声は、く、かすれていました。
「学にったの?」 「ったわよ! 親として当然でしょう! 佐伯さんのお母さんにも会ってきたわ。あの子はもう来ない。退学するのよ! だから、もういいでしょう? あなたのくだらないおままごとは、これで終わりよ!」
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その瞬でした。
のから、ふっと息が漏れました。 それはため息でも、嗚咽でもありませんでした。 糸が、完全に切れた音でした。
は、私が差ししたボールペンを受け取りませんでした。 代わりに、テーブルのに置かれた『内願事同』を、両で静かに持ちげました。
「……?」
ビリッ、と鋭い破裂音が、静まり返ったリビングに響き渡りました。
私は息を呑みました。 は無表のまま、その切な推薦の類を、真っつに引き裂いたのです。
「な……何をして……!」
ビリッ、ビリビリッ。
のは止まりませんでした。 つに裂き、つに裂き、細かな吹になるまで、狂ったように推薦を引き裂いていきました。 真っな片が、テーブルのの賞状や百点のテストのに、のように散らばっていきました。
「やめなさい! 、何をするの! 正気なの!?」
私は半狂乱になり、の両腕を掴んで制止しようとしました。 その、が激しくを捩って私のを振り払おうとしました。
そのはずみで、の制のブレザーの袖がきくめくれがり、に着ていたのカッターシャツの袖が肘のまで引っ張られました。
私の線が、の剥きしになった腕の内側に縫い付けられました。
息が止まりました。 臓が、底の抜けた穴に落ちていくような覚がしました。