みかん小説
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"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第3話

「夫婦は対等だと言うなら、被害者みたいな顔ばかりするな」

はそう言い捨て、音をてて階へがっていった。

美咲はきりになったリビングで、静かにしゃがみ込んだ。

彼女は割れた器の破片を拾い集め、丁寧にに包んだ。

布巾を取りし、にこぼれたたい汁を拭き取った。

に、自分のを見つめた。

薬指には、に直がはめた指輪がっていた。

『世界で番幸せにする』

あのの声が、くの記憶から聞こえた気がした。

美咲は指輪をし、テーブルの央にそっと置いた。

彼女は洗面所へ入り、鏡のった。

の頬には、本の指の跡が赤く浮かびがり、しずつ腫れ始めていた。

美咲はして顔を洗い、タオルで静かに拭き取った。

彼女は自へ向かい、クローゼットをけた。

数着の、数冊の専、ノートパソコン、そして母から譲られた腕計。

で、自分のものとして確実に残っていたのはそれだけだった。

静かに荷物をスーツケースに詰めていると、スマートフォンが震えた。

母からの話だった。

美咲は呼吸をしてから話にた。

「もしもし」

母の優しい声が聞こえた。

「美咲、まだ起きていたの?来のお父さんの誕、直さんと帰って来られそう?」

美咲は瞬言葉に詰まった。

「うん。予定を確認してみる」

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婚する、と言いかけて、彼女はを閉ざした。

通話を終えた、美咲はスマートフォンの写真フォルダをいた。

に届いた、英語のメールのスクリーンショットが保されている。

国際通貨基ワシントン本部、級エコノミストとしての採用通だった。

着任は、翌

美咲はその画像を、代からの友である藤原亜美と裕子だけが入っているLINEグループへ送信した。

数秒、亜美から着信があった。

美咲はすぐにた。

「美咲、決めたの?」

「決めた」

美咲は静かに答えた。

亜美の声がし真剣になった。

「直さんには?」

「言わない。もう説する必がないから」

亜美は力く言った。

「航空券は私が取る。の午便で成田からよう。パスポート報を送って」

美咲はさく息を吐いた。

「ありがとう」

、美咲はキャスターを引きずって音をてないよう、スーツケースを持ちげて階段をりた。

暗いリビングのテーブルには、した指輪がそのまま残っていた。

彼女は度と振り返ることはなかった。

玄関の扉が、静かに閉まった。

その瞬、佐伯美咲としてのが完全に終わった。

た美咲は、亜美が配してくれた都内のサービスアパートメントへ向かった。

夜のタクシーの窓ガラスに、自分の顔が映っていた。

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の頬だけが、赤く腫れがっている。

運転度だけバックミラーを見たが、何も聞かなかった。

美咲にとっては、その沈黙がとてもありがたかった。

に入ると、美咲はまずスマートフォンのカメラを起し、自分の顔の写真を撮った。

正面、、そして刻がはっきりと分かる画面のスクリーンショット。

次に、割れた器とリビングの様子を撮っておいた写真を確認した。

彩佳から届いていた挑発なメッセージも保した。

との通話履歴を含め、すべてを弁護士と共するためのクラウドへアップロードした。

これは決して、仕返しのための準備ではない。

自分の記憶を、から『そんなことはなかった』とき換えられないための、必な作業だった。

結婚活では、直るたびに、美咲が先に謝ってきた。

子に嫌を言われても、私の受け取り方が悪いのかもしれないと自分を納得させてきた。

流産、直がすぐに仕事へ戻り、子から『いつまでも落ち込むと直がかわいそう』と言われたでさえ、美咲は泣く所を浴だけにとどめた。

その積みねによって、彼女は自分の痛みを疑う癖がついてしまっていた。

けれど、鏡に映る赤い指の跡は、嘘をつかない。

美咲は、務省職員の族相談窓と、女性支援に詳しい弁護士へメールを送信した。

当に傷つけたいのではない。

接触されたに、確実に自分を守るための防策だ。

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