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"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第6話

美咲は実にいない。

にもいない。

成田空港へき、その完全に連絡を絶った。

に、つの答えがはっきりと浮かんだ。

彼女は、自分の元へ帰るつもりが全くない。

はすぐにを振り、その考えを打ち消した。

ありえない。

美咲は結婚してから度も働いていない。

父の会社は、佐伯の支援がなければ経営が厳しい状態だ。

弟の学院留学にも、額のがかかる。

彼女が、だけで暮らしていけるほど、世のは甘くないはずだ。

戻るしかないのだ。

戻ってきたら、今度こそ妻としてのをきちんと理解させる。

交官の庭では、個よりも体面が優先されるがある。

彩佳をに置いたのも、なことに過ぎない。

自分がし譲歩してバッグを渡せば、また元の活に戻るはずだ。

そう自分に言い聞かせながらも、直は夜ごと、美咲の残した指輪を机のに置いた。

彼は何度もその指輪を眺めた。

内側に刻まれた文字は変わらない。

けれど、『永』という言葉だけが、を追うごとにひどく空虚に見えた。

の夜、直は母に呼ばれて実へ向かった。

子は、美咲がいなくなったこと自体よりも、務省関係者の妻たちに噂が広がることを配していた。

子は苛った様子で言った。

「週末の使夫主催の昼会、どうするの?」

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子は直を睨みつけた。

「美咲さんが来なければ、みんなが勘繰るでしょう」

線を逸らした。

「体調良だと言えばいい」

子は呆れたように息を吐いた。

「いつまで通すつもり?」

子は命令調で言った。

「あなたから話して、命令してでも連れ戻しなさい」

話にないんだ」

が答えると、子はたく言い放った。

族カードを止めればいいのよ。活できなくなれば、すぐに帰ってくるわ」

は反射に『分かった』と言いかけ、を閉ざした。

美咲のカード利用履歴を確認すると、った夜から度も使われていなかった。

事も、ホテルも、航空券も、佐伯では切払っていない。

子の作戦は、最初から全く成しないのだ。

子が尋ねた。

「彩佳さんはどうするの?」

は疲れた声で答えた。

「数だけ置く。美咲さんが戻るに、きちんと話をつけなさい」

子は顔をしかめた。

「あの子はでは従順に見えるけれど、妙ながあるから」

は、母の言葉に初めて違を覚えた。

『妙な』。

美咲が嫌だということは、全て『』や『わがまま』に分類されてきた。

その夜、直のスマートフォンに、省内の同僚からメッセージが届いた。

『奥さん、ワシントンへったのか?』

は画面を見つめた。

『国際融の研究者だったんだな。以、君のスピーチ原稿の為替部分を直したのも奥さんだろう』

は息をんだ。

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の国際会議で、直は円興国債務について講演をった。

原稿の数字に矛盾があると美咲が指摘し、夜まで資料を修正してくれたのだ。

講演は成功に終わり、司からもく評価された。

は翌朝、美咲に『助かった』と言言っただけだった。

省内では、すべて自分の分析として語っていた。

い返せば、交団の夕会で座席順の文化な配慮を教えてくれたのも美咲だった。

の妻が話していた融危の背景を、わかりやすく説してくれたのも美咲だった。

彼女は、仕事をしていなかったのではない。

の残らないところで、直の仕事をずっと支えていたのだ。

それを当然だとっていたのは、自分だけだった。

は美咲の番号へ、初めてい謝罪の言葉を打ち込んだ。

『昨は悪かった。話がしたい』

送信ボタンを押す。

メッセージはつのチェックマークのまま、かなかった。

、送信そのものができなくなった。

美咲は、話番号を解約していたのだ。

はその画面を見たまま、けなかった。

彼女は、って話にないのではい。

自分と繋がる回線そのものを、完全に断ち切ったのだ。

美咲が消えて数が過ぎた。

は民の調査会社に捜索を依頼した。

担当者の黒川は、無駄な切見せない代の男だった。

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