"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第14話
監察官が直に尋ねた。
「なぜ、奥様は警察へ届けなかったといますか?」
直はうつむき、答えられなかった。
監察官は厳しく言った。
「あなたの将来を守るためではありません」
監察官は直の目を見た。
「被害者が、自分の活を再建することを優先したからです」
監察官は類を閉じた。
「届けなかったことを、為が軽かった証拠と考えないでください」
その言葉は、直の胸にく、鋭く刺さった。
美咲は最まで、直を攻撃することをのにはしなかった。
自分の仕事へ戻り、必な証拠だけを提し、は制度に任せたのだ。
直は記者の目を避けながら、官舎へ帰る途、以美咲とよくち寄ったさな菓子のを通った。
張帰りに最を買って帰ると、美咲はいつもんだ。
『覚えていてくれたんだ』
たったそれだけで、彼女は幸せそうに笑った。
直は、彼女が本当に欲しかったのは価なバッグではなく、自分のを尊し、覚えていてもらうことだったのだと、遅すぎる理解をした。
直はへ入り、最を箱買った。
しかし、渡す相はもういない。
官舎の机に置かれた箱は、賞期限が切れるまで、度もけられることはなかった。
直は、ほとんど衝にワシントンきの航空券を買った。
務省の調査に私な渡航をすることにはい批判もあった。
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だが、次休暇を申請し、最の便へ無理やり乗った。
のフライトの、直はもできなかった。
彼女に何を言うつもりなのか、自分でも全く分からない。
謝罪するのか、戻ってきてほしいと頼むのか、報告や証拠の提をやめてくれと交渉するのか。
どの目も、にした途端に卑しくえた。
ワシントンに着いた朝、直は国際通貨基本部の向かいにった。
ガラス張りの巨な建物には、世界各国から来た職員が次々と吸い込まれていく。
複数の言語がき交い、警備員が分証を厳格に確認し、記者らしい々が入り付で待していた。
直は、自分が完全に部者になった気がした。
昼過ぎ、回転扉から美咲がてきた。
瞬、本だと分からなかった。
濃紺のパンツスーツを着こなし、肩につかないさに切った髪がに揺れている。
いヒールで、く定した取りで歩いていた。
隣にはの同僚がいて、美咲は流暢な英語で何かを説していた。
彼女がをかして振りを示すと、は真剣な表で頷いた。
で声をさくし、義母の話を遮らないよう常に注していた女性とは、まるで別のようだった。
いや、別ではない。
こちらが本当の美咲なのだ。
直が、ろうとしなかっただけだ。
美咲は交差点のでを止め、ふと顔をげた。
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の向こうにいる直を、彼女は見つけた。
直は、彼女が驚くかとった。
るか、泣くか、なくとも表がきく揺れるとった。
美咲は、わずかに首を傾げただけだった。
同僚へく言葉をかけ、を先にかせてから、信号を渡ってきた。
美咲は直のにち、平静な声で言った。
「どうしてここにいるの?」
直は絞りすように答えた。
「会いに来た」
美咲はを見せずに言った。
「会えたでしょう」
直はいがった。
「話がしたい」
美咲は首の腕計を見た。
「分なら。向かいのカフェへきましょう」
まるで、度の極めてい訪問者へ、事務にを割くような調だった。
カフェで、美咲はブラックコーヒーを注文した。
砂糖もミルクも入れず、んでから直を真っ直ぐに見た。
美咲はカップを置いた。
「話して」
直は呼びかけた。
「美咲」
美咲はたく遮った。
「さんでいいわ。婚協議の相に昔の呼び方をされるのは、だから」
直の指が、カップの取っにい込んだ。
直は線を落とした。
「母と理奈が、君の族へ連絡した」
美咲は無表で答えた。
「聞いているわ」
直は顔をげた。
「とも、戻ってきてほしいとっている」
美咲は首を傾げた。
「あなたは?」
直は答えに詰まった、く言った。
「戻ってきてほしい」
美咲は静かに問い返した。
「なぜ?」
直は必に言葉を紡いだ。