"妻を殴った外交官と2億円の空売り" 第17話
「あなたはその利益を原資とする資でを支援し、半にの娘と結婚した」
直は声を荒らげた。
「結婚とは関係ありません!」
答える言葉が、自分でも驚くほどっぺらだった。
交の現では、曖昧な表現や余が役につこともある。
だが、監察の席で求められるのは、揺るぎない事実だけだった。
方、佐伯フィナンシャルホールディングスでは、の融資枠が急速に縮し、債券の償還期限が迫っていた。
取引先は規契約を次々と見送り、株価はヶで半分以になった。
会である父は、役員会で直を激しく責めてた。
「おがあの女をからさなければ、ここまでの事態にはならなかった!」
直は、初めて父へ反論した。
「違います」
直は父を真っ直ぐに見た。
「問題は、美咲がてったことではない。俺たちがやったことです」
父は顔を真っ赤にした。
「何を今更!」
直は静かに言った。
「を追い込み、救ったふりをした。結婚も彼女をに見続けた」
直は会議の役員たちを見回した。
「隠していた事実が表へただけです」
父は鳴り声をげた。
「を守る気がないなら、てけ!」
直は、その言葉を聞いて笑いそうになった。
それは、美咲に浴びせ続けた言葉と全く同じだった。
『このをてどこへく?』
広告
『誰のおかげで暮らせる?』
『恩を忘れるな』
支配するは、相がれようとすると、必ず居所を奪う言葉を使うのだ。
直は、それを美咲に向けていた。
直はをげた。
「ます」
静かに答えると、父も子も言葉を失い、ち尽くした。
直は佐伯の巨な邸宅をれ、さな官舎へ移った。
肩きも財産もまだ形のでは残っていたが、族のろ盾を失った自分が、急に空っぽになったようにじた。
彩佳から、何度もメッセージが来た。
最初は『配しています』。
次に『私なら支えられます』。
最には『今の状況でになるのは危険です』とかれていた。
直は切返信しなかった。
数週、彩佳が別の既婚実業と級レストランで事をしている写真が、SNSに流れた。
美咲がいた頃なら、彼女を憫にって庇ったかもしれない。
今は、何もじなかった。
輔と誠が、直を居酒へ呼びした。
でテーブルに向きっても、以のような軽は全くなかった。
輔がビールグラスを置いて言った。
「美咲さんの報告、読んだよ」
輔は直を見た。
「個攻撃じゃない。政策文として完全に正しい。だからの関がいたんだ」
誠はグラスを見つめたまま、い声で続けた。
「直、を追い込んだ計画、俺はっていた」
直が勢いよく顔をげた。
広告
「どこまで?」
誠は懺悔するように答えた。
「全部だ。おの母親が、俺の叔父のファンドを使った。俺は止めなかった」
直は誠を睨んだ。
「なぜ今言う?」
誠は直の目を正面から受け止めた。
「美咲さんを殴った夜、俺はそこにいた。何も言わなかった」
誠は両で顔を覆った。
「あのの顔を見て、俺も加害者だとった」
輔もテーブルので拳を握った。
「俺は、夫婦喧嘩だからと逃げた。悪かった」
直は、を責める気にはなれなかった。
最初にをげたのは自分だ。
それ以に、美咲の助けを求める声を何も無したのも自分だ。
直は力なく聞いた。
「美咲から、最に何か聞いているか」
誠はゆっくりと首を振った。
「連絡する資格がない」
その夜、直は官舎へ戻り、古いLINEの履歴をいた。
美咲からのメッセージが、画面にずらりと並んでいた。
『今夜は何頃帰る?』
『の会、今のドレスで丈夫?』
『お義母さんの薬、受け取っておいたよ』
『は寒いからコートを忘れないで』
直の返信は、ほとんど文字以内だった。
『遅い』
『任せる』
『解』
『忙しい』
最のメッセージは、平打ちの夜だった。
『、方張からく戻れそう。夕は何がいい?』
直は、彩佳と会っていて『いらない』とだけ返していた。
美咲の返事は『分かりました』。
それ以、彼女からメッセージは切ない。
直は気づいた。
あの発で、突然終わったのではない。
美咲はそのずっとから、しずつ直に話しかけることをやめていたのだ。