"左目を殴った夫と2200万円の離婚清算" 第7話
些細な理由で物を投げつけられたこと。
言い返そうとして腕をくねじげられたこと。
逃げようとして背をたい壁に押し付けられたこと。
酒に酔った彼が暴力を振るい、翌朝になるとを買ってきて泣きながら謝ったこと。
真歩の消毒するが、ピタリと止まった。
「それ、何回あったの?」
「覚えてない」
私がそう答えた瞬、自分でもその言葉の異常さにぞっとした。
私は、数え切れないほどの恐ろしい来事を、全て「したことではない」というさな箱に無理やり押し込めて見ないふりをしていたのだ。
真歩は、使い終わった綿棒をゴミ箱へ捨て、私の真正面に座り込んだ。
「みさき、これからはあなたが自分で決めることに、私は切をさない」
真歩は、私の目を真っ直ぐに見つめた。
「でも、つだけ約束して。直に会うは、絶対にでかないこと」
彼女は、言葉に力を込めた。
「本に戻るとしても、必ず弁護士と警察に相談してからじゃないと戻らないこと」
私は、きく息を吸い込んだ。
「うん」
自分でも驚くほど、私の声ははっきりと響いていた。
真歩は、数秒私をじっと見つめた、く頷いた。
「わかった。じゃあ、ここから作り直そう」
その夜、私は真歩の部のソファに横になった。
真歩が私の体に毛布をふわりとかけ、部の照を暗く落とした。
広告
「眠っていいよ。私がここにいるから」
その言を聞いて、私は1分もしないうちにい眠りに落ちていた。
直と暮らしたこの3、私は玄関の鍵がガチャリと回る音に常に怯え、眠りはいつも浅かった。
彼がで酒をんで酔っていれば、殴られるかもしれない。
彼が酔っていなくても、私の返事がしでも遅ければ、理尽に嫌を損ねるかもしれない。
そんな恐怖から解放されたその夜、私はのように12も眠り続けた。
翌朝、目を覚ますと、キッチンから懐かしい噌汁の匂いが漂ってきた。
真歩は、フライパンで鮭を焼き、おにぎりと卵焼きを際よく作っていた。
「イギリスでこれだけ本っぽい朝をせる友、貴でしょ」
真歩が自げに笑った拍子に、私の顔の傷がしだけ痛んだ。
それでも、私は久しぶりにの底から笑うことができた。
温かい事を終えた、私は養母の恵子に国際話をかけた。
私は、しばらくに滞して仕事を探すことにしたと切りした。
本当のことをどこまで伝えるべきか迷ったが、恵子は私の声の響きを聞いただけで全てを察した。
「直さんに、何かされたの?」
私は、返す言葉を見つけられず、ただ黙り込んだ。
「みさき、私はあなたを自分ので育てると決めたから、いつかあなたが帰れるでいるつもりだったの」
広告
恵子の声は、どこまでも優しかった。
「おがなくても、狭くても、いつでも帰ってきていいのよ」
私は、胸の奥がぎゅっと締め付けられるのをじた。
「今は、戻れない。でも、私は全な所にいるから」
私は、をすすりながら答えた。
「それならいい。無理に説しなくていいから、病院にはちゃんときなさい」
恵子は、直にも義母の雅子にも、私の連絡先や居所は絶対に教えないと固く約束してくれた。
そのから、私は本格に婚へ向けての準備と、ロンドンでの職探しを始めた。
私は、本の弁護士とオンラインで初回の面談をった。
画面越しの弁護士は、静に状況を分析してくれた。
直側が婚を拒否したは、庭裁判所での調続きが必になること。
ロンドンで取得したDVの診断、怪の写真、罵声の録音データ、LINEの履歴が極めてな証拠になること。
また、私が会社に対して無報酬で貢献していた件や、マンション購入に負担したについても、財産分与や別途の請求として争える能性があること。
マンション購入の1200万円は、私が結婚から貯めていた婚預とご祝儀のから全てしたものだった。
しかし、マンションの登記名義は義母の雅子になっていたのだ。
資は私の座から直の座へ送され、その直の座から義母へ振り込まれるという複雑な形をとっていた。
「争うことは分に能です。