"米寿の席で外された嫁" 第10話
午、千鶴が梅の菓子を受け取りに来た。義母はしい写真を見て、「私も入れてもらえばよかった」と冗談を言った。
「今はお客様ですから、次は買った菓子と緒に撮りましょうか」
子がそう言うと、千鶴はし考え、「それならのがいい」と答えた。族写真ではなく、客と主の写真。その距なら、今の2は並ぶことができた。
ので、千鶴は袋を持ち、子はい作業着のままった。達也がスマートフォンを構える。千鶴は肩を寄せようとしたが、子とのにはのひらつ分の隙が残った。
写真を確認した千鶴は、「もっと笑えばいいのに」と言った。
「これでいいんです。そのの顔ですから」
子は撮り直さなかった。完全に仲直りした嫁と姑を演じる必はない。傷つけられた記憶を消さず、だからといって憎しみだけを抱えず、互いに払うべきものを払い、守るべき距を守る。それが2にできる関係だった。
閉、子は翌の製造表を確認した。注文数、担当者、終予定刻がかれ、余には全員の休憩も記されている。33の帳には仕事ばかりが詰まり、自分の休みはどこにもなかった。
今の予定表には、来週曜の午が空欄になっていた。子はそこへ《何もしない》とき、丸で囲んだ。
必とされないを怖がることは、もうなかった。
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誰の役にもたない午も、自分のの部だった。
そのの暮れ、松堂と《ひかり》は初めて別々の歳暮注文を受けた。以なら子が両方の予定を気にして眠れなくなっただろう。今は松堂の状況を耶から聞いても、求められない限りをさなかった。
1227、松堂の包装が故障した。達也から相談の話があったが、子のも翌朝の発送を控えていた。子は修理業者の連絡先だけを伝え、を貸すことは断った。
松堂では注文主へ事を説し、簡易包装への変更か1の延期を選んでもらった。数件のキャンセルはたものの、半の客は承した。耶は徹夜をせず、予定より2遅れただけで作業を終えた。
翌、達也は「昔ならおがで全部包んだ」と言った。責める調ではなく、自分たちがどれほどの無理へ依していたか確かめるような言い方だった。
「昔の私は、それを断れなかったから」と子は答えた。「でも、全部包めたことと、全部包むべきだったことは違うでしょう」
がけ、千鶴は2つのの菓子を親戚へ配った。松堂の箱には《宮本の》、ひかりの箱には《子さんのしい》と自分で付箋を貼っていた。以なら両方をのとして扱っただろう。完全ではなくても、義母のでもしずつ境界がまれていた。
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、子は自分の与からさな腕計を買った。価な物ではないが、誰にも相談せず、自分が働いたの対価で選んだ。でを見るたび、33を取り戻したとはわなかった。過は戻らない。ただ、これからの1を誰へ渡すかは、自分で決められる。
を閉めた夕方、子は計をし、窓辺へ置いた。は定休だった。鳴らす必のない目覚ましを確認し、部の灯りを消した。
その曜、子は目覚ましをかけずに眠った。それでも習慣で6に目が覚めたが、布団をる理由はない。台所で分の珈琲を淹れ、読みかけの本をいた。の売も、千鶴の通院も、達也の昼も、その朝だけは考えなかった。
昼頃、耶から写真が届いた。松堂の先にしい勤務表が貼られ、千鶴の名の横にも《接客・2》とかれている。いメッセージには、《今は全員、予定どおりに帰れそうです》とあった。
子は《お疲れさま》とだけ返信した。助言も確認も加えなかった。松堂のは、そこにいるたちが終わらせる。をすことは見捨てることではなく、相の責任を相へ返すことなのだと、ようやく自然にえた。
午、散歩の途でのを通った。定休の札がた扉の向こうに、昨までの仕事具が静かに並んでいる。
休んでいるは、止まっているのではない。またけるために閉じている。
子は鍵を取りさなかった。
そのまま川沿いまで歩き、ベンチに座った。くで学帰りの子どもたちが笑い、に若い葉の匂いが混じっていた。
33、子は「も来てくれる」とわれることで居所を保ってきた。今は、自分でくとかないを決められる。の朝にはをける。それは追いてられた役目ではなく、自分が選び直した仕事だった。
夕方、予定表の《何もしない》という文字へさな線を引いた。消したのではない。何もしないを、予定どおり終えた印だった。
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