"七年目の爪痕" 第5話
へと隔していたのだ。
なぜ?
どうして実の息子や妻に隠して、こんな細を?
真帆の疑問に答えるかのように、通帳の底から枚の類が現れた。
それは、俊介が勤める方のレターヘッドが印刷された、極秘の『査察予告通』のコピーだった。
付は、泰造が倒れるか。
宛名は、佐伯俊介。
内容は、真帆の血を凍らせるのに分だった。
『私投資失敗に伴う顧客預の流用疑惑、並びに無担保融資の焦げ付きに関する内部監査の実施について』
通には、俊介がFX取引で作った数千万円の借を穴埋めするため、支の架空名義座を利用していた疑いが記されていた。
そして、その類の余に、泰造のりに満ちたりきがあった。
『俊介はのを盗む棒になった。このも、も、親戚の遺産も、すべてあいつの破滅の穴埋めに消えるだろう。あいつには銭も残してはならん』
泰造はっていたのだ。
する息子が、どれほど浅ましく堕落していたかを。
そして、自分が倒れれば、俊介が違いなく敷とを担保に入れて借を隠蔽し、介護の負担だけを真帆に押し付けるであろうことを、最初から見抜いていたのだ。
その、デスクのに置かれていたスマートフォンのバイブレーションが、静寂を切り裂いた。
画面に表示されたのは、登録のない固定話の番号。
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局番は、川越だった。
真帆は躊躇いながらも、通話ボタンをスワイプした。
「……もしもし」
『朝に失礼いたします。佐伯真帆さんのお話で違いないでしょうか』
落ち着いた、しかし芯の通った男性の声だった。
「はい、そうですが……どちら様でしょうか」
『お話が繋がって堵いたしました。私は弁護士の野寺律と申します。故・佐伯泰造様より、遺言執者として指定されております』
野寺。
信託通帳の送先にかれていた、あの弁護士だった。
真帆の喉が鳴った。
『泰造様が遺された特約に基づき、の法がけた本、あなた様にご連絡を差しげました。……真帆さん、今どちらにいらっしゃいますか?』
「私……今、敷の、裏の作業にいます」
話の向こうで、野寺弁護士が微かに息を呑む気配がした。
『作業にお入りになれたのですね。ということは、泰造様から直接、“あの鍵”を託されたのですね』
「はい。お義父さんが、くなる直に……」
『結構です。ならば、資格は満たされました』
野寺の声に、厳格な決が宿った。
『真帆さん、落ち着いて聞いてください。本午、佐伯俊介氏が当の担当者と共に、佐伯邸の産担保設定の続きをしようとしています。俊介氏は、あなたをから追いしたで、泰造様の遺産を自分が単独相続したと偽り、千万円の融資を引きす算段です』
やはりそうだったのか。
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昨夜の異常な追いし劇は、すべて今朝の続きに真帆を同席させないための作だったのだ。
「そんなこと……止められないんですか? 私、もう婚届を突きつけられて、追いされて……」
『止められますとも』
野寺弁護士は、徹なまでの確信を込めて告げた。
『そのために、泰造様は、俊介氏の横領の証拠を集め、準備をえてこられたのです。真帆さん、そのデスクの引きしの最段をけてみてください』
真帆は言われた通り、い欅の引きしを引いた。
そこには、漆塗りの細い箱が納められていた。
蓋をけると、には厳に封印された、枚の公正証の原本が入っていた。
『泰造様が平成に公証役で作成された、公正証遺言です。そこにかれている文言を、読みげる必はありますか?』
真帆の指先が、公証の赤い契印に触れる。
『佐伯泰造の所する、建物、並びに信託財産のすべてを――』
野寺弁護士のく澄んだ声が、受話器越しに、そして真帆ののでなった。
『――男の妻、佐伯真帆に、遺贈する』
朝のが、の窓から筋、差し込んできた。
埃ひとつない机ので、公正証の文字がく浮かびがっていた。
『真帆さん、すぐに私の事務所へ来てください』
野寺弁護士は言った。
『の獄に、利息をつけて請求を叩きつけるです』