"27年目の再会" 第12話
何度も選択をしていた。
翌。
直は美子に聞いた。
「佐藤さんと話した」
美子の表がし変わった。
「そう」
「おはっていたんだな」
「何を?」
「俺の会社で、自分の名が消されたこと」
い沈黙。
そして。
美子は頷いた。
「っていた」
「なぜ」
「あなたが苦しかったから」
直は首を振った。
「またそれか」
美子は驚いた顔をした。
「また?」
「いつもそうだ」
「あなたは、自分より誰かを優先する」
「昔のおも」
「今のおも」
美子は黙った。
直は続けた。
「でも」
「俺はもう、それを美しいことだといたくない」
美子が顔をげた。
「なぜ?」
「誰かがして成する幸せは」
「本当の幸せじゃないからだ」
美子の目がし揺れた。
その夜。
美子は久しぶりに昔のアルバムをいた。
若い自分。
さな娘。
会社を始めたばかりの直。
写真を見ながら言った。
「私ね」
「悔していたわけじゃないの」
直は隣で聞いていた。
「でも」
「ずっとつだけっていた」
「何を」
美子は写真を見る。
「もし、あの」
「誰かが私に聞いてくれていたら」
「あなたは本当にどうしたいのって」
「し違ったかもしれない」
直は何も言わなかった。
その夜。
は初めて。
過を責めるためではなく。
理解するために話した。
数週。
直の元に通のが届いた。
差。
佐伯元編集。
には枚のコピー。
。
美子がいた応募の作文だった。
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テーマ。
「私が作りたい」
直は読み始めた。
最の文。
そこにはこうかれていた。
「は、誰かのためにきることができる」
「でも、その自のも、同じように切にされるべきだ」
直は静かにを閉じた。
妻はから。
同じことを言っていた。
ただ。
自分だけが。
聞いていなかった。
。
の活は、以とはきく変わっていた。
きな変化があったわけではない。
が変わったわけでもない。
引っ越したわけでもない。
ただ。
のにあった見えない壁が、
しずつなくなっていた。
「直さん」
「何?」
「この原稿、読んでくれる?」
美子が渡した。
昔なら。
直は忙しいと言っていたかもしれない。
でも今は。
「もちろん」
そう答えた。
美子の本が発売された。
タイトルは、
『選ばなかったも、私の』
きなベストセラーではなかった。
テレビにることもなかった。
でも。
読んだからくのが届いた。
「もう度挑戦してみます」
「母親であるに、自分でもいいとえました」
そんな言葉だった。
直はそれを見ていた。
そして。
初めて理解した。
美子が欲しかったものは。
成功ではなかった。
誰かに勝つことでもなかった。
ただ。
自分のを、自分自として認められることだった。
ある。
里奈が実に来た。
で卓を囲む。
昔なら。
会話のは直の仕事だった。
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会社の話。
売の話。
未来の話。
しかし今。
自然に美子の仕事の話になる。
「最、どう?」
里奈が聞く。
「楽しいよ」
美子は答えた。
その顔を見て。
里奈は笑った。
「お母さん」
「何?」
「今の方が若く見える」
美子は笑った。
「そう?」
「うん」
「昔のお母さんより」
直はその言葉を聞いて。
し胸が痛んだ。
でも。
今は逃げなかった。
事の。
里奈が帰ったあと。
直は庭にた。
美子が植えた。
昔からあった。
でも。
昔の自分は見ていなかった。
「美子」
「何?」
「ありがとう」
美子は笑った。
「急に何?」
「分からない」
直は正直に言った。
「ただ」
「今まで見えていなかったものが、し見えるようになった気がする」
美子は静かに頷いた。
数。
直はの理をしていた。
その。
古い箱を見つけた。
。
すべての始まりだった箱。
には。
あの内定通。
古い写真。
そして。
最に枚の。
若い美子がいたメモ。
「もし、このを選ばなかったとしても」
「私のが消えるわけではない」
直はその文字を見た。
そして。
箱を閉じた。
もう。
しむために見る必はなかった。
そのの夜。
美子とで夕をべた。
「ねえ」
美子が言う。
「何?」
「もし、に戻れたら」
直はし考えた。
「おを京へかせる」
美子は笑った。
「本当に?」
「ああ」
「でも」
美子は続けた。
「そうしたら、今の私はいないかもしれない」
直は頷いた。
「分かってる」
「だから」
しを置いて。
「過を変えたいんじゃない」
「今のおを、ちゃんと見る」
美子は何も言わなかった。
ただ。
さく笑った。
その。
美子は、59歳から始めた仕事を続けた。
きな成功者にはならなかった。
しかし。
自分の名で文章をき。
自分の考えを届けた。
直もまた。
しいを始めた。
会社を作った男ではなく。
の夫として。
のとして。
数。
里奈が母の遺品理をしていた。
冊のノートが見つかった。
最のページ。
そこには。
美子の字でこうかれていた。
「には、選ばなかったがある」
「でも、そのを失敗と呼ぶ必はない」
「私は、選ばなかったを抱えたまま」
「私のをきた」
里奈はそのページを閉じた。
窓のでは。
父と母が植えたが咲いていた。
誰かが犠牲になったから続いた族ではない。
誰かがしたから残った関係でもない。
いをかけて。
ようやくは。
互いをのとして見つけ直した。
27目にして。
初めて、本当ので。
同じ所にったのだった。