"頬を打たれた契約社員の正体" 第7話
創業者、名誉会。つまりこの会社を代で築きげた紛うことなき頂点。全ての社員の、全ての役員の、番につたったの物。
そのを使えない老として扱い、雑用を押し付け、無理難題を命じ、執務環境ので頬を打った。
キラのからスマートフォンが滑り落ちた。パン、と乾いた音が静まり返ったフロアに響いた。彼女はそのに崩れ落ちそうになった。とっさに机にをついて必に体を支える。昨自分が振りげた、あのがこの会社の創業者の頬を打ったのだ。その事実が津波のように彼女に押し寄せた。
はゆっくりとフロアを見渡した。かつて自分と仲が汗を流してちげた会社。その空気が今はこんなにもたく張り詰めている。その目にはりよりもいしみが宿っていた。
「久しぶりだね、みんな。」
の静かな声がフロアに響いた。
「私がここにこうしてっていることをどうか許してほしい。このになって分を偽るような真似をしてしまった。」
彼はゆっくりと言葉を続けた。
「だが、そうでもしなければ見えないものがあった。からの報告では決して分からない。この会社の本当の姿がね。」
の線が静かにキラへと向けられた。キラはガタガタと震えていた。もう言い訳の言葉もてこなかった。
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「さて。」
は静かに言った。その声には無を言わせぬ静かな威厳があった。
「これから役員会を始めよう。話さなければならないことがほどある。」
——
役員会議に主ったものが集められた。ずらりと並ぶ幹部たちの央にが静かに腰をろした。その隣にはキラと、そして青ざめた顔の杉専務の姿もあった。
は枚の資料を机のにそっと置いた。昨彼がとして入力させられたあの取引先データだった。
「まずこれを見てもらおう。」
の声は穏やかだった。だがその言で部の空気がピンと張り詰めた。
「昨分の取引の記録だ。このにどうにもおかしなものがいくつもある。相の倍い値で同じ社に発注が繰り返されている。差額はざっと見ても数億……。」
杉の喉がごくりとなった。
「その取引を承認していたのはキラ部。そして最終決済の捺印をしていたのは杉専務、あなただね。」
「何を根拠にそんな……!」
杉が声を震わせた。「言がかりだ! たまたまその会社との取引がかっただけで……。」
「たまたまか。」
は静かにもう枚のを取りした。
「ではこの会社の登記もたまたまかね? 発注先の会社の実質な持ち主を辿っていくと、あなたの親族の名にたどり着く。会社のを内の会社に流し、差額を懐に入れていた。
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違うかね?」
杉の顔がのようにくなった。反論の言葉はもうてこなかった。
「そしてその正を隠すために。」
は続けた。
「気づいた若を次々と追いしてきた。おかしいと声をげたものをパワハラで押しつぶし、退職に追い込んできた。このにこの部署を辞めた若者の数を、あなたは把握しているかね?」
会議が凍りついたように静まった。
「私の元に通のが届いた。差ししの名はない。だが、そこにはこういてあった。あなたが命を注いだ会社で、いものが泣いていますと。」
の声がわずかに震えた。
「私はそれを確かめに来た。そしてこの目で見たのだ。真面目に働く若者が具のように使い捨てられ、殴られる。そんな職になり果てたが子の姿を。」
その言葉に震える幹部たちので、の若の顔を脳裏によぎらせたものもいた。あの通報のをいたのはいったい誰だったのか。やがて幹部のがそっと目を伏せた。くこの正にうすうす気づきながら声をげられずにいたものだった。その沈黙もまた罪だった。はそんな幹部たちを責めるでもなく、ただ静かに見つめた。
「皆を責めているのではない。番悪いのはこの会社をこんなにしてしまった仕組みだ。そしてその仕組みを作ってしまったかつての私にも責任がある。
」
はくをげた。創業者が幹部たちにをげたのだ。同ははっと息をんだ。