"毎日1センチ狭くなる庭" 第12話
彼は40、自分の犯した罪を贖うために、の崩落がいつ自分の、そして隣のを呑み込むかを、たったで計測し続けていたのだ。
そして、その危険をり尽くしていた弟の次郎と、500万円の裏につられて私を騙した夫の健太。
すべてのジグソーパズルのピースが、恐ろしい精度で噛みわさった。
図館で印刷した40の聞記事をコートのポケットに押し込み、私はのるを急いだ。
に戻ると、隣の野寺清——あの老が、濡れた軒にポツンと佇んでいた。 古びたまみれの作業着。には、使い古されたきなレザー製のバインダーを抱え、まるで自分の期を悟った老犬のような、力のない目でがの庭を見つめていた。
私は躊躇うことなく、敷のけ垣を越えて老にづいた。
「清さん」
初めてその名で呼ぶと、老はビクッと肩を揺らし、驚いたように私を見げた。濁った瞳に、かすかな揺らぎがる。
私はポケットから折りたたんだ聞記事を取りし、老の目のに広げた。 『都化学神・現主任測量技師 野寺清』
その活字を目にした瞬、老の全から力が抜け、膝から崩れ落ちそうになった。私はわずその痩せこけた腕を支えた。濡れた作業着越しに伝わってくるのは、痛々しいほどの震えだった。
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「……って、しまったのか」
老のから漏れたのは、枯れ葉が擦れうような掠れた声だった。
「ええ。あなたが毎朝、うちの庭に杭を打ち続けていた本当の理由も」
私は静かに言った。 「あれは境界線を奪うためじゃない。40の化学廃液で溶けたの空洞……その盤沈の速度を測っていたんですね?」
老はく、く首を垂れ、の落ちる面に線を落とした。やがて、堰を切ったように語り始めた。声は震えていたが、そこには40たったで抱え続けてきた、すぎる罪の告があった。
「……そうだ。40、あので密度の酸性廃液が漏れした。の岩層はのように溶け、には巨な空洞が広がった。ワシは測量技師として会社に危険を訴えた……だが、弟の次郎は……役員だったあいつは、事故を隠蔽した」
老は激しい咳込みに襲われながらも、必に言葉を紡いだ。
「会社はを閉鎖し、配管を埋め戻しただけで、からを被せて分譲にした。ワシは恐ろしかった。いつか誰かがみ、ごと呑み込まれてぬのではないかと……。だからワシは会社を辞め、このに留まり、毎、の『歪み』を測り続けてきたんだ」
「あの杭の番号……『1024』や『1025』は、何なんですか?」
私の問いに、老は抱えていたレザーのバインダーをおしそうに撫でた。
「ワシが観測を始めてからの『数』だ。
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1024ヶ……約85分(※観測サイクルとしての通算数)のデータだ。30ごとに杭を打ちめ、の歪みの限界値を測定する。30目に杭をの隙へ落とすことで、空洞のさと圧縮率を確認してきた。だが……」
老は血の気の失せた顔をげ、がの庭を指差した。
「今回の『1025サイクル』は、異常だ。連ので、残留していた廃液が再び活性化し、の空洞が気に膨れがった。もう30など持たない……『8本目』で表への侵蝕が始まった。あのは……あと数で、完全に底へ崩落する」
老の言葉は、刑宣告と同じだった。
「清さん……なぜ、弟の次郎さんはこんな危険なを、私たちに売ったんですか?」
私の問いに、老は苦痛に顔を歪めた。
「あの男は……次郎は、40の法投棄の証拠がくから噴するに、を処分したがっていた。だから、相より遥かにい値段で売りにしたんだ。事故が起きた、責任をすべて『欠陥をりながら買った所者』になすりつけるために……」
「そして……私の夫、健太はそれをっていた」
私が呟くと、老は静かに頷いた。
「健太さんは……次郎から裏を受け取る代わりに、事項説の免責特約にサインした。あいつは、君の連れいは……が崩落することをりながら、君のでこのを買い、事故が起きたら保険と保証で逃げ切るつもりだ」
ので、たい鐘の音が鳴り響いた。
やはり、そうだったのだ。 健太は、私が毎朝怯える姿を横目で見ながら、「自分だけが助かるシナリオ」