"毎日1センチ狭くなる庭" 第15話
1,000万円が、私の個名義の座から直接、決済座へと振り込まれた確な記録。 夫婦の共財産ではなく、私の「特財産(固の資産)」であることを示す完璧な類だ。健太が危険をりながら私を騙し、この資産を詐欺に搾取したというかぬ証拠となる。
「健太さん……あなたは私を無力な専業主婦だとを括っているけれど」
私は通帳をしっかりとバッグに収め、たい笑みを浮かべた。
「法律の世界では、あなたが踏みにじったその1,000万円こそが、あなたを刑事と民事の両方から追い詰める『決定打』になるのよ」
ミシミシ……。 元で、の骨組みが歪む気な音が響いた。 が崩壊へと加速している。私はスマートフォンを取りし、あらかじめリストアップしておいた「ある物」へダイヤルした。
「もしもし、級建築士事務所の神先でしょうか。急をする盤沈と、宅構造の緊急現調査をお願いしたく……」
話で調査の打診をしている最、からメリメリ……という穏な材のきしみ音が響いた。
「バリッ!」
乾いた破裂音がリビングに響き渡る。見げると、壁(クロス)が対角線にきく引き裂かれ、の膏ボードのいがパラパラとフローリングのにい落ちてきた。 斜めに歪んだ井から、がを浴びてキラキラと落ちてくる。
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全体が、鳴をげながら斜めへと傾ぎ始めていた。
「奥さん、丈夫ですか!? 今、すごい音が聞こえましたが……」 話の向こうで建築士の男性が声を張りげた。
「丈夫です。先、今すぐ来てください。……がありません。が倒壊するに、公な証になる構造診断と盤データの作成をお願いします」
私は話を切ると、迷わずスマートフォンを掲げた。
準器アプリを起し、リビングのに置く。画面に表示された数字は「傾斜角:2.8度」。宅基準で「構造のな傾斜」とされる数値をはるかに超え、むの半器官を狂わせるレベルの歪みだ。 私はに置いたゴルフボールが、まるで坂を転がるように勢いよく壁際へ転がっていく様子を画で撮した。
続いて庭へた。 景は、もはや惨状と呼ぶにふさわしかった。
野寺清老が打った杭の周辺——『1025-8』から『1025-10』にかけてのが、直径3メートルほどの巨な「蟻獄」のように落ち込んでいた。り続くがその窪みに濁流となって流れ込み、の暗へと吸い込まれていく。 がの基礎コンクリートには、の指がすっぽり入るほどの太い亀裂(クラック)がり、台の属補プレートが歪んで剥がれかけていた。
壁の亀裂、傾いた、割れた基礎、に吸い込まれる。
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私は震えつてず、すべての破壊の痕跡を写真と画に収め、タイムスタンプとともにクラウドストレージへリアルタイムで自保していった。
恐怖は切なかった。あるのは、このが崩れる音を聞くたびにまる、徹なまでの達成だ。
壊れればいい。崩れればいい。 このが派に倒壊すればするほど、健太と次郎が隠そうとした「罪」はのに晒され、奴らの言い逃れは能になる。
そのだった。
「ガシャーン!」
隣の野寺のから、窓ガラスが々に割れる甲い音が響き渡った。
「せ! どこに隠した、このボケジジイ! バインダーだ! 40分の観測データをどこへやった!?」
荒々しい号。野寺次郎の声だ。
「渡さん……! 絶対に渡さんぞ……! あれはおたちの罪の証拠だ……!」
清老の痛な叫び声と、バカッという鈍い打撃音が聞こえた。次郎が暴力を振るっているのだ。盤の崩落速度が予を超えたことで焦った次郎が、老が握っているはずの「決定な証拠」を力ずくで奪・破棄しに来たのだ。
「清さん……!」
私はバッグのに隠されたいバインダーの触を確かめた。証拠の本物は、ここにある。だが、あの老が殺されてしまう。
私はスマートフォンの録音アプリを起すると、迷わずのへびし、隣の壊れた玄関へとりした。
が吹き込む割れた窓から野寺のにび込むと、元には乱雑に散らばった類と割れた器が転がっていた。