"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第6話
田さん」
悟は配そうな表を作った。
「会は、ご体調はいかがですか?」
声は柔らかく、いかにも親に聞こえる。
田は表を変えなかった。
「問題ありません」
それだけを答えた。
応接に入った悟は、ソファに座るに内を度見渡した。
その線が、棚のの置物から窓のの庭へと流れる。
そして、庭の景で線がピタリと止まった。
庭でを並べている勇気の姿が見えた。
悟はさくつぶやいた。
「あの子は……」
悟の声に、瞬だけ何かが混じった。
それが何かを田が考えるに、悟はもう柔らかい表に戻っていた。
悟は田に微笑みかけた。
「会のおりいのお子さんですか?」
田は淡々と答えた。
「詳しくは会から」
田はそう言い残し、健造を呼びにった。
健造が応接に入ってきたのは、それから5分だった。
は向かいってソファに座った。
悟がフォルダーをき、類を広げ始めた。
『事業再構築案』とかれた表が見える。
国内の部品調達ラインを縮するという内容だった。
部をに移管することで、原価率を12%改善できると記されている。
グラフと数字が並ぶ資料は、見た目のでは然としていた。
健造はそれを受け取った。
ページをめくりながら、静かに尋ねた。
「この数字は、どこから来ているんだね」
悟はよどみなく答えた。
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「直3の調達コストの実績と、ベンダーの見積もりを精査しました」
悟は自信ありげに微笑んだ。
「数字は正確です」
健造はそれ以何も言わなかった。
資料をパタリと閉じた。
「検討する」
健造はそれだけを言い、ゆっくりと席をった。
悟は瞬、何かを言いかけた。
しかし、健造の背に向かって言葉を発することはしなかった。
悟が帰り支度をしていた、田が廊にるよう促した。
玄関まで案内する途だった。
悟はを止め、田に向き直った。
「し、お洗いを」
悟はそう言って、廊の奥へ向かって歩きした。
田は玄関で静かに待った。
悟が戻ってくるまで、3分ほどかかった。
トイレにしてはしいとったが、田は何も言わなかった。
悟は爽やかな笑顔で戻ってきた。
「失礼しました」
悟はそう言って靴を履いた。
革靴が畳を踏む音がざかる。
ので、のドアが閉まる音が聞こえた。
田はを閉めた。
邸宅のへ戻ろうと振り返る。
その、廊の奥から勇気が歩いてくるのが見えた。
庭から戻ってきたのだろう。
着に枯れがしついている。
しかし、勇気の顔がいつもと違っていた。
何かを考えているというより、何かを確認しているような顔だった。
勇気は、先ほど悟が通った廊のでち止まった。
をわずかにすんとかす。
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ハッとして、勇気は田を見た。
「さっきの。誰ですか?」
田は静かに答えた。
「常務の、堀田悟さんだ」
勇気はしばらく黙り込んだ。
それから、ゆっくりとをいた。
「そのの着、松のみたいな匂いがしました」
勇気は言葉を探すように目を伏せた。
「柔剤だといます。同じ匂いを、に嗅いだことがあります」
田はわずかに眉をかした。
「に?どこで?」
勇気はしの、沈黙した。
それから、田の目を真っ直ぐに見た。
「会ののに潜っていたが、同じ匂いをさせていました」
田はかなかった。
表も切変えなかった。
しかし、のでは複数の報が音もなく並び始めた。
ブレーキオイルの漏れ。
翌の転落事故。
そして今、この子供が告げた事実。
田は勇気に向かって、静かに言った。
「それを今夜、会に話してくれるか」
勇気は黙って頷いた。
それ以の言葉はなかった。
その夜、勇気は健造に同じことを告げた。
堂ではなく、健造の執務に呼ばれた。
向かいのソファに座り、勇気は落ち着いた声で話し始めた。
「あのの柔剤の匂い、特徴があります」
勇気は記憶をたどるように言う。
「松の成分に、ゴム質が混ざったやつで、販品のでも使っているがない匂いです」
健造は黙ってを傾けていた。
「のにがいたのは、会が来る30分くらいだったといます」
勇気は状況を説し続けた。
「面が乾いていたのに、アスファルトにの形の湿った跡が残っていたから」