"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第7話
勇気は健造を見た。
「そのも、この匂いがしていました」
健造は勇気の話を最まで遮らずに聞いた。
話し終えた勇気に、健造はつだけ尋ねた。
「なぜ、そので言わなかったんだ?」
勇気はすぐに答えた。
「確認したかったからです」
勇気は線を落とさなかった。
「匂いだけでは違えることもあります。今、同じが来て同じ匂いがしたので、確かだといました」
健造はい、黙っていた。
それからゆっくりと頷いた。
「分かった。よく話してくれた」
健造はそれだけを言った。
勇気が礼して部をていく。
扉が閉まると同に、健造は田に話をかけた。
「悟の向を調べなさい」
健造の声は徹だった。
「ただし、悟られないように」
田は受話器の向こうで答えた。
「かしこまりました」
田は静かに話を切った。
悟が帰り際に廊の奥へ向かっていた、あの3分。
その廊には、今は使われていない部があった。
翌朝、浜田が掃除のためにその部に入った。
サイドテーブルのに、見慣れない革のフォルダーが置かれているのに気づいた。
浜田は悟が忘れていったのだとい、すぐに田に届けた。
田がフォルダーを受け取り、をけた。
には、応接での説とはまったく別の類が挟まっていた。
数字の並んだ表が数枚ある。
部に「調達コスト差額」
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とかれていた。
田はそれを枚に取り、じっくりと眺めた。
数字のは、田にはすぐには分からなかった。
田は類をフォルダーに戻した。
そのまま執務へ向かい、健造に届けた。
健造は類を受け取った。
内容をし見てから、フォルダーごと机の引きしのにしまった。
健造は田に指示をした。
「悟には、忘れ物は見つからなかったと伝えなさい」
田はく頷いた。
その言葉の真を問うことはしなかった。
その夜、健造が執務の灯を消した。
田がそれを確認したのは、付が変わっただった。
邸宅はい静寂に包まれている。
廊の突き当たりにある、勇気の部。
扉のにはまだの線が見えていた。
田はそのを見つめながら、廊をゆっくりと歩いた。
勇気の部ので、田はを止めた。
扉の向こうから、微かにをめくる音が聞こえる。
あの古い帳を読んでいるのだろうと、田は像した。
田はノックしなかった。
代わりに廊の壁に背を預け、そっと目を閉じた。
そばのアレルギー。
箸を並べる癖。
幸介の字が詰まった帳。
そして、悟の匂いを覚えていた。
田のので、点と点が線になろうとしている。
しかし、まだ完全な線にはなっていなかった。
田はゆっくりと目をけた。
再び廊を歩き始める。
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自分の部へ戻りながら、田はつのことを考えていた。
幸介様がくなったのは10。
あの子は、10歳だと言っていた。
田は廊の途でピタリとを止めた。
計算は1秒もかからなかった。
しかし、田はその計算の結果を、自分のではまだ確定させなかった。
会が確かめるまでは、自分が先に確信を持つべきではない。
それが田というの流儀だった。
翌の昼過ぎ、勇気は庭にた。
縁に沿ってを並べる作業を再しようとしていた。
そこへ、浜田が笑顔で声をかけてきた。
「勇気くん、今はしのを案内しましょうか」
浜田は優しく尋ねた。
「図があるんですよ」
勇気はし考えてから、こくりと頷いた。
浜田に案内された図は、壁面に本棚が並ぶ静かな部だった。
技術、歴史、文学全集。
勇気は本棚を端から順に眺めていった。
専の背表を読みながら歩く。
やがて、械学の棚のでが止まった。
勇気は冊の分い本を抜き取った。
目次をき、に読み始める。
浜田はれた子に座った。
編み物をしながら、勇気の様子を静かに見守っていた。
勇気は本を読みながら、で膝のに何かをく仕をしている。
指先だけで、見えない文字をくような作。
集しているの癖らしかった。
浜田はそれを見て、どこか懐かしいような気持ちになった。
この子は誰かに似ている。
浜田はそうった。
しかし、誰に似ているのかは、浜田にもいせなかった。