"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第23話
勇気はあかりの話を黙って聞いていた。
表は静かだった。
しかし、あかりのを握る力がわずかにくなっている。
「孤児院のに連れてく夜。勇気に言い聞かせようとしました」
あかりは涙声になった。
「でも3歳には理解できない。だから何も言わなかった。眠っている勇気を抱いて歩いて、置いてきました」
あかりの声が初めてきく揺れた。
「置いてくる直まで、何度も引き返そうとしました」
あかりは嗚咽をこらえた。
「でも引き返すたびに、これではがないとい直して。最に度だけ顔を見て……それで……」
あかりは言葉を続けられなかった。
しばらく黙って泣き続けた。
病のが静かだった。
窓のでがの枝を揺らす音がする。
「幸介さんの帳だけ持たせました」
あかりはやっとのことで言葉を絞りした。
「それしか残せるものがなかった。でもあれがあれば、いつかこの子が自分の父親のことをるがかりになるとって」
健造はちがった。
子からちがり、ベッドのそばまで歩く。
そして再びをげた。
さっきよりもく。
「私の息子がんで、あなたがでそれだけのことを……」
健造の声が震えた。
「私が何も気づかずに、何もしなかった。申し訳なかった」
健造の声は、72かけて積みげてきたさを全部持っていた。
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あかりは健造を見た。
首を横に振ろうとした。
しかし、健造はをげない。
あかりはしばらくその健造の姿を見ていた。
それから静かに言った。
「顔をげてください。幸介さんのお父様に、そんなことをさせるわけにはいきません」
健造はゆっくりとをげた。
目が真っ赤だった。
あかりはそれを見て、自分の目からまた涙が流れるのを止められなかった。
勇気があかりのを両で包んだまま言った。
「お母さん、緒に帰りますか?」
シンプルな問いかけだった。
帰る所がどこかも、どうやって帰るかも、勇気は指定しなかった。
ただ「緒に」と言った。
あかりは勇気を見た。
10歳になった子供の顔。
置いてきたはまだ3歳だった。
あれから7。
何があったかを、あかりはまだ何も聞いていない。
それでも、この子供は今自分のを握ってここにいる。
「帰ります」
あかりははっきりと答えた。
「どこへでも」
その、担当医との話しいがわれた。
あかりの病状は、肺結核の治療を継続。
完治はしていないが、適切な環境と治療があれば回復の見込みがあるということだった。
田が廊で担当医の話を聞く。
京の専病院への転院の続きをめることを申した。
担当医は「本の体力と次第です」と答えた。
田はあかりの病に戻り、健造に状況を伝えた。
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健造はあかりに向かって言った。
「京に戻りませんか?治療を続けながら、勇気のそばにいられる所を用します」
あかりはし考えてから言った。
「ご迷惑をおかけします」
「迷惑ではない」
健造は即座に答えた。
「あなたは族だ。最初からそうだった。私が気づくのが遅すぎた。それだけのことだ」
あかりはその言葉を聞いて、目を伏せた。
い、伏せていた。
やがて顔をげた、その目は決に満ちていた。
「お願いします」
転院の続きは、田がになってめた。
担当医への連絡。
京の病院の配。
移送の準備。
それらがうまでの数、健造と勇気はその病院のある町に滞した。
健造はくのさな旅館を取り、毎勇気を連れてあかりの病を訪れた。
あかりの体はまだ本調子ではなかった。
しかし、を追うごとに声がやすくなり、目にが戻ってくる。
勇気は毎あかりのそばに座った。
その、図で読んだ本の話をした。
械の仕組みの話。
数字の話。
健造に教わったこと。
あかりはそれを、目を細めながら聞いていた。
折相槌を打ち、折質問をする。
7分のを、しずつ取り戻すようなだった。
3目の夕方。
病であかりが勇気に尋ねた。
「あの帳、今でも持っているの?」
勇気は着の内側から帳を取りした。
あかりに差しす。
あかりはそれを受け取り、表を指でなぞった。
擦り切れた布張りの表。
幸介が使い込んだ跡。
あかりの目が、帳の表ので止まった。