"会長を救った孤児と十年目のDNA" 第24話
「幸介さんが番切にしていたものだった。どんなに忙しくても、これだけはいつも持っていた」
あかりは勇気に帳を返した。
「あなたが持っていてくれてよかった。幸介さんもそうっているとう」
勇気は帳を受け取り、胸元にしまった。
それからあかりを見て言った。
「お父さんのこと。教えてください」
勇気は真っ直ぐにあかりを見る。
「帳にいてあること以のことを」
あかりはしの、勇気を見た。
それから窓のに目を向け始めた。
幸介がどんなだったか。
どんなものが好きで、どんなに笑い、どんなを持っていたか。
あかりの声はさかったが、言葉は丁寧だった。
勇気は黙って聞いていた。
言も聞き逃すまいとするように、目を真っ直ぐにあかりに向けたまま聞いていた。
健造は部の隅の子で、それを静かに聞いていた。
幸介のことをこんなに話す声を、健造は久しく聞いていなかった。
聞きながら、幸介がここにいないことが、初めて本当ので実できた気がした。
これまでの10は、どこかでまだ信じられていなかったのかもしれない。
今夜、息子の妻が息子の話をする声を聞いて。
ようやく、いなくなったのだとのいところで納得できた。
それは絶望なしみではなかった。
しみを超えた先にある、静かな受け入れだった。
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京への移送は5にわれた。
専の医療搬送の配を田がえる。
あかりは担架ではなく、子で移した。
病院ので、あかりは度振り返った。
く滞した建物を見る。
それからを向いた。
勇気が子の横を歩く。
健造はそのろを、田と並んで歩いた。
からにかけてのたいが、駐を吹き抜けた。
あかりがし咳き込んだ。
勇気がすぐにち止まり、あかりの背にを当てた。
咳が治まると、あかりは勇気を見て微笑んだ。
「丈夫」
勇気は頷いたが、は背からさなかった。
そのままはまでゆっくりと歩いた。
健造はそののろ姿を見ながら歩き続けた。
田が隣で静かに言った。
「良かったですね。会」
健造は答えなかった。
しかし、田には健造が頷くよりも確な何かが、その横顔に見えた。
がりし、病院のある町がざかっていく。
あかりは助席に座り、窓から景を見ていた。
部座席で、勇気はあかりの方をずっと見つめている。
あかりが折振り返るたびに、勇気は線をそらさなかった。
やがて、あかりがを向いたまま言った。
「ごめんね。勇気」
内に謝罪の言葉が落ちた。
勇気はしの、黙っていた。
それから言った。
「謝らなくていいです」
勇気はを向いて言う。
「お母さんがいなかったから、私は会に会えました」
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勇気の平坦な声が続く。
「会に会えたから、お父さんのことが分かりました」
あかりはを向いたまま、静かに目を閉じた。
涙が頬を流れる。
声はなかった。
勇気は言葉を継いだ。
「だから、全部繋がっていたといます」
は速に入り、速度をげた。
流れていく景のを、を乗せたが京へ向かってり続ける。
内は静かだった。
しかしその静けさは、発の朝とは違う静けさだった。
何かが欠けた静けさではなく、必なものが揃いつつある静かな満ちりた。
健造は窓のを見ながら、その違いを体でじていた。
72きてきて、まだこういう覚をることができた。
それだけで分だとった。
京に戻ってから、邸宅のにの気配が増えた。
それまで静かすぎるほど静かだった堀田の敷。
そこにあかりが加わったことで、廊にのく音が増えた。
堂から話し声が聞こえるようになった。
劇な変化ではなかった。
しかし、そのさな変化が邸宅全体の空気をほんのし柔らかくした。
浜田はあかりのために、1階の当たりのいい部をえた。
毎朝決まったに、事と薬を届ける。
あかりはまだ起きていることが難しかった。
午は横になっていることがかった。
しかし午になると体がし楽になる。
勇気が学から帰ってくるにわせて起きがる。
部の子に座って、窓のを見ながら待っていた。