"乳がん手術日にゴルフへ行った夫の末路" 第8話
りが湧くとった。
泣くとった。
でも、違った。
胸の奥から何かが静かに抜けていく覚だけがあった。
ああ、そうなんだ。
その言だけが、のに浮かんだ。
啓介は、来られなかったんじゃない。
来なかったのだ。
私はスマートフォンを取りして、ゴルフの名を検索した。
隣の県だった。
で1半ほど。
朝かられば、1過ごせる距だった。
検索結果にてきた写真には、広い芝とクラブハウスが映っていた。
青空ので笑っているたちの姿もあった。
その画面を見た瞬、喉の奥がひりついた。
私はあの、術着に着替えていた。
母にを握ってもらっていた。
怖くて、でも平気な顔をしようとしていた。
同じに、啓介はこんな所にいた。
私はレシートを丁寧に折った。
破りもしなかった。
丸めもしなかった。
ただ、帳の透ポケットに挟んだ。
洗濯物のは、まだそこにあった。
畳みかけのタオルも、片袖だけ折ったワイシャツもそのままだった。
私はもう度、ジャケットを持ちげた。
ポケットのを確かめる。
何もない。
でも、もう分だった。
たった1枚のなのに。
今まで見ていた夫の姿が、根元から変わってしまった気がした。
その夜。
啓介はいつも通りに帰ってきた。
「今、何?」
彼は鞄を置きながら聞いた。
私はキッチンで噌汁をよそいながら答えた。
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「鮭」
「ああ、いいね」
それだけだった。
ネクタイを緩めて、を洗ってテーブルにつく。
テレビをつけてビールをける。
鮭をほぐしてべる。
何も変わらない。
私の帳のには、あののレシートが入っている。
啓介はその向かいで、何もらない顔をしてご飯をべている。
その普通さが、気悪かった。
、啓介はソファーに寝転んでスマートフォンを見ながら言った。
「今さ、部がまた面倒くさくて」
私は器を洗いながら、そうとだけ返した。
もう話のなんて、どうでも良かった。
このは、私が術を受けたを覚えているのだろうか。
覚えていたとしても、そのに自分がどこで何をしていたのか、どんな顔でいすのだろう。
私は皿を拭きながらふとった。
問い詰めても、きっと言い訳をする。
取引先に誘われた。
仕事の話もしていた。
断れなかった。
終わったことだろう。
分そういう。
その顔が、簡単に像できた。
像できるということは、もうこののことをそういうだと分かっているということだった。
その夜、私は帳を枕元の引きしにしまった。
気を消して横になっても、眠気は来なかった。
暗ので、私ははっきりとっていた。
仕方なかった、じゃない。
あれは、最初から仕方なくなんかじゃなかった。
翌朝。
啓介が仕事にた、私はしばらくキッチンにっていた。
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流しには、啓介が使ったコップが1つ、置きっぱなしになっていた。
そこにしだけ麦茶が残っている。
私はそれを見たままかなかった。
昨見つけたレシートのことが、かられない。
ゴルフ、ランチ、ドリンク、術の。
それだけでも分なはずなのに。
またどこかで、何かの違いかもしれないとおうとする自分がいた。
そんなわけないのに。
でも、確かめたかった。
確かめて、完全に終わらせたかった。
私はの鍵を取って、玄関をた。
朝の空気はたかった。
啓介ののドアをける。
シートポケットには、折れたレシートが何枚か入っていた。
コンビニ、ガソリンスタンド、ドラッグストア。
その1番奥に、のが1枚あった。
駐券だった。
見た瞬、臓が1度だけく打った。
表には、昨見つけたレシートと同じゴルフの名。
私はそれを裏返した。
入庫刻、午740分。
庫刻、午510分。
私はその数字を、しばらく見つめていた。
午740分。
その、私はまだをるだった。
病院へ向かう準備をして、気持ちを無理やり落ち着かせようとしていた頃だ。
母はに来て、優馬の朝支度をしてくれていた。
啓介は、もうその点で着いていたのだ。
私は病院へ向かうので、何度も呼吸をしていた。
1で受付を済ませて、入院の説を受けて、術着に着替えた。
母はその、優馬を保育園へ送って、急いで病院へ来てくれた。